TAKARAZUKA FOREVER

 兵庫県宝塚市には未婚女性だけの劇団、宝塚歌劇団がある。大阪に住む筆者は小学生の頃から家族に連れられて宝塚大劇場に通っていた。

 現在のチケット料金はB席3500円が最低料金だが、筆者が子どもの頃はC席500円という料金設定があった。それは「安い料金で多くの人が見られるように」という宝塚歌劇団の創設者・小林一三(こばやし・いちぞう)氏の理念によるものだと家族に聞かされた。

 その理念の通り、C席500円で子どもでも華やかな「夢の世界」に接することができた。

 夢の世界にあこがれる女性は多い。歌劇団入団には宝塚音楽学校で2年間の専門教育を受けなければならないが、その入学試験は「東大より倍率が高い」といわれ、また応募資格には年齢制限とともに「容姿端麗」という条件がある。歌劇団には若く美しい女性が毎年入団してくるシステムが構築されている。

 現在の歌劇団には五つの組があり、それぞれに男役のトップスターがいる。トップスターになれば数年後には退団する。どんな人気スターでも、このシステムに従って退団していく(ごくまれに例外はあるが)。原則として、宝塚の舞台の中央に立つのは若く美しい人に限られる。

 筆者は最近になって、気づいたことがある。このシステムは日本古来の「常若(とこわか)の思想」に通じるものではないか。常若の思想の具現化といえば、伊勢神宮の式年遷宮(せんぐう)である。20年ごとにすべての社殿や宝物をつくり変えて、神に新しい社殿にお遷(うつ)りいただく儀式である。

 これによって社殿や宝物は美しいまま後世に伝えられ、それらをつくる技術も継承されていく。日本人は式年遷宮によって、伊勢神宮の原初の姿、そして神への畏敬の念を永遠に伝えていこうとした。この儀式を、日本人は(中断はあったが)1300年間、継続させてきた。

 歌劇団のシステムは年齢を重ねた者には酷かもしれない。しかしこの「若さと美しさ」重視の精神が、歌劇団としての永続性につながっているのではないだろうか。また、歌劇団は若く美しい女性をただ集めているだけではない。一糸乱れぬ美しい舞台をつくり上げるために、音楽学校時代から厳しい訓練が続く。それは技芸の習得にとどまらず、日常の立ち居振る舞いにまで及ぶ。

 それに彼女たちが耐えられるのは、宝塚歌劇という他にはない美しい舞台に対する「愛」があるからだ。そしてこの「愛」を観客も共有しているからこそ、100年を超える歴史を刻むことができたと言える。それは日本人が、神への畏敬の念を式年遷宮という形で1300年にわたって表現してきた精神に通じるものではないだろうか。それは言わば「美の永続性」への奉仕なのだ。

 宝塚歌劇の代表曲の一つに「この愛よ永遠に―TAKARAZUKA FOREVER―」がある。サビの歌詞は「FOREVER,TAKARAZUKA FOREVER 永遠の願い 永遠の祈り」である。コロナ禍の今、宝塚歌劇も再開と休演を繰り返し、試練の中にある。だが宝塚は永遠でなければならない。1日も早い完全復活を願い、祈ってやまない。

(アジア太平洋研究所 総括調査役 真鍋 綾)

 

(KyodoWeekly10月5日号から転載)

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