「落語の森」秋の噺

 「食べ物の噺(はなし)」が続いたので、今回は「季節の噺、秋編」。まずは、民話のようなおとぎ話のようなホノボノとした「権兵衛狸」。三代目三遊亭金馬師(9月21日から当代(四代目)金馬師が金翁に、息子さんの金時師が五代目金馬襲名のW披露興行)や先代(四代目)鈴々舎馬風師のものが有名。刑務所慰問で受刑者に向かって「満場の悪漢どもよ、よく来たなァ!」とやったのが馬風師。その馬風師をこよなく愛した立川談志師もよく高座にかけ、お弟子さんで一昨年67歳で亡くなった左談次師も演(や)っていた。30年ほど前か、酒豪・左談次師、山梨石和のイベント「川中島合戦戦国絵巻」に筆者がお呼びした時もよく飲んでくれた。師匠談志が若き日に使っていた出囃子(でばやし)「あの町この町」で登場し、何とも軽い江戸前の高座だった。

 「松曳(まつひ)き」は、粗忽(そこつ)の範疇(はんちゅう)を超えた殿様と三太夫さんの噺。先代(五代目)柳家小さん師が演り、談志師が得意にし、今は桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)師が十八番(おはこ)にしている。「松曳き」、このタイトルにしたセンスが何ともステキ!

 休養中だった談志師が(スミマセン、今回、談志師がひんぱんに登場します)亡くなる前の年の4月5日、突然「立川流日暮里落語会」に現れ、「上がらせて」と高座に出て演ったのが「首提灯」。実はその1週間後に紀伊國屋ホールで8カ月ぶりの復帰高座が予定されていて、「首提灯」を演ることになっていた。さすがにあの談志師をもってしても長期休養明けの高座はプレッシャーだったとみえる。早いもので師が逝って9年の月日が流れる。サゲで自分の首を提灯に見立て、かざしながら「ハイ御免(ごめん)、ハイ御免」と演るが三遊亭圓生・先代(八代目)林家正蔵・古今亭志ん朝各師それぞれの演出が楽しめる。

 「野ざらし」といえば先々代(三代目)春風亭柳好師の売り物で、当時他の演者は遠慮して演らなかったが、唯一演ったのが春風亭柳枝師。筆者も生の高座は知らないが、師の大塚の自宅に設えた高座で鳴り物・噺の稽古に前座だった談志師らが通った。本名勝巳からあだ名が「お結構の勝っちゃん」、ニコニコと明るい高座だったらしい。来春この名跡が復活、春風亭正朝師の弟子・正太郎さんが真打ち昇進とともに62年ぶりに九代目を襲名する。

 「九州吹き戻し」という珍しい噺がある。熊本から江戸に帰りたい男、始めは順調な船旅だったが大嵐に遭い、3日後に打ち上げられたのは桜島! 帰りを急いだために百二十里吹き戻されてしまうというスケールの大きな噺。中学生の頃か、先代(四代目)三遊亭圓馬師で聴いた。役者のような顔立ちと不思議な抑揚のしゃべり方を覚えている。「美文調が好き」と談志師が復活させ、俊英・談春師が演っている。五街道雲助師も重厚な口調で聴かせてくれる。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly9月21日号から転載)

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