【拡大版 本の森】コロナ禍にどう向き合うか 『心をたもつヒント』76人が語る

 残すところ3カ月を切った今年はコロナで始まり、コロナでおそらく終わる。年が明けて1・17は阪神大震災から26年、3・11は東日本大震災から10年を刻む。

176ページ、共同通信社(税別909円)

 災禍は時がたつに連れ、生活、職業、学校などさまざまな場面で被災者の間に心理的な落差を生んだ。阪神大震災を経験した精神科医の中井久夫氏は、こうしたはさみを開くように広がる現象を「はさみ状格差」と呼んだ。一方で、心のバランスを崩す被災者が増え、行政職員など〝支援者〟のメンタルヘルス問題も深刻化した。

 新型コロナウイルス感染症による災禍、コロナ禍もまた、同じように「はさみ状格差」を生んでいるといえる。

 地震災害と同じくらい、いや、それ以上に社会構造のひずみや人間の本性を白日の下にさらし、社会的・経済的に弱い立場の人々に深刻なダメージを与えた。震災後に現れたメンタルヘルスの不調は今回、医療現場にも忍び寄っている。

はさみ状格差のイメージ

追い詰めない

 

 先の見えない不安や閉塞(へいそく)感に、私たちはどう向き合えばいいのか。本書は、政府の緊急事態宣言発令の4月から7月にかけて、最高齢は戦前に生まれた80代冒険家の三浦雄一郎さんから最年少は平成生まれの大学生社長伊藤瑛加さんまでさまざまな分野の人たちに、一般社団法人共同通信社の社会部、文化部、生活報道部、外信部、科学部、運動部、支社局の若手記者らがそのヒントを聞き、加盟紙に配信したインタビュー連載企画の単行本化である。

 巣ごもり生活を豊かにする知恵、自分を追い詰めないためのノウハウ、はたまた社会や政治とのかかわり方…。解剖学者の養老孟司さん、歌手さだまさしさん、建築家の坂茂さん、児童文学作家の角野栄子さん、宇宙飛行士の山崎直子さんら有名人のメッセージも多数上るが、社会的弱者の支援活動をしている人や当事者の声も並び、実にバラエティーに富んでいる。

 コロナの影響による解雇や雇い止めは、9月下旬の時点で見込みを含め6万人を超えた。

 労働経済学者の首藤若菜さんは「休業者の半数は非正規労働者です。雇用喪失が進み、多くの人々が生活基盤を失う前に早く手を打つ必要があります」と指摘している。

 3月から、3千を超える母子家庭にお米を届ける活動をしている支援団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長の赤石千衣子さんは、相談内容の変化を感じとっている。「緊急事態宣言が出た4月は生活困窮を訴えるものが大半でしたが、7月から『死ぬ方法を検索している』『うつ病と診断された』など、メンタルヘルスの不調を訴える内容が増えました」

 

頑張らない

 

 自殺問題に取り組む弁護士の松井仁さんは「ためらわずにSOSを出してください。周囲の態度も大切です。否定せず、寄り添うかたちで聞いてください。『そうだったんですね』と言うだけでも、十分に相談の価値があります」と訴えた。

 「コロナ禍をきっかけに、成長や発展、生産性に偏り過ぎた社会観、生命観が是正されていくことを願っています」。社会学者富永京子さんの言葉は、生産性にこだわり、頑張らないことに慣れていない私たちへの警鐘と受け止めたい。

(共同通信社会部 担当部長・編集委員 高橋 裕哉)

※本書の売り上げの一部を、医療従事者支援のため寄付します。

 

(KyodoWeekly10月19日号から転載)

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