全国の「近代化遺産」を守れ 今秋、一斉公開、企画事業も

 東京駅丸ノ内側の駅舎や大阪市中央公会堂、富岡製糸場、琵琶湖疎水南禅寺水路閣など、幕末から第2次世界大戦末期までに建設され、日本の近代化に貢献した建造物「近代化遺産」が注目されている。全国の自治体などは保存や保全に力を入れているが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で資金難にあえいでいる。近代化遺産の全国組織「全国近代化遺産活用連絡協議会」は近代化遺産の希少性を広く知ってほしいと懸命に取り組んでいる。

舞鶴赤れんがパーク。1901(明治34)年から21(大正10)年ごろまでに建てられた旧海軍の赤れんが倉庫群=京都府舞鶴市

東京駅の駅舎も

 

 幕末から第2次世界大戦末期までに近代的手法によって建設され、日本の近代化に貢献した産業、交通、土木などの建造物は「近代化遺産」と呼ばれている。近代化遺産を保存するとともに、観光や伝統産業による地域振興に役立てることを目的に1997年、全国近代化遺産活用連絡協議会(全近)が組織された。全近は、市区町村、都道府県、任意団体や企業など幅広い会員で構成されており、日本で唯一の近代化遺産の全国組織だ。

 近代化遺産とされているのは、東京駅丸ノ内本屋(ほんや)や大阪市中央公会堂など現在も使われている建物の他、群馬県の富岡製糸場や琵琶湖疎水南禅寺水路閣、石炭や銅山などの鉱山に関わるもの、ダムや堤防など治水に関わるもの、発電施設や軍事施設、港湾施設など多岐にわたる。

 今年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大による経済低迷と観光客の激減によって、保存や保全のための資金難が全国的に大きな問題になっている。保存や保全のためには、技術の継承が必要だが、それが産業や職業として成り立っていないなど、課題が多い。まずは、近代化遺産の希少性をもっと広く知ってほしいと、全近ではPR活動に力を入れている。

小浜線松尾寺駅の旧本屋。小浜線の旧駅舎で、現ホームの南側に南面して立っている=京都府舞鶴市

全国一斉に公開

 

 活動の柱となっているのは、毎年開催される全国大会だ。昨年は鳥取市で開催し、今年は岡山県津山市での開催を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により来年に延期することとなった。全国大会では、鉄道遺産部会や水道施設部会、灯台施設部会など七つの専門部会で事例紹介や近代化遺産を取り巻く課題についてパネルディスカッションを行う。全国大会の開催地は、近代化遺産のエクスカーション(体験型見学会)を催しており、保存・活用の現状視察が恒例となっている。

 1870(明治3)年10月20日に鉄道や造船などを管轄する工部省が設置されたことにちなんで、10月20日を近代化遺産の日としていることから、この日の前後に当たる毎年10~11月にかけて、全国各地の近代化遺産を一斉公開している。これが全近のもう一つの活動の柱だ。普段は非公開の貴重な近代化遺産の内部を見学できる他、特別ガイドツアーや鉄道敷上をサイクリングするツアーなどの企画事業も実施している。

 今年は全国38カ所で施設の見学や近代化遺産にちなんだイベントを開催する。一例を紹介すると、群馬県富岡市の「北甘(ほっかん)変電所」は、1919(大正8)年に建てられ、国の有形文化財にも登録されているが、現在も使われている施設のため、通常は内部が非公開になっている。今年は11月23日にガイド付きの見学会が行われる。

 公開事業に先駆け、キックオフイベントとして、9月18~20日、東京都千代田区のKITTE・東京シティアイで各地の近代化遺産を紹介するパネル展を開催。会期中は近代化遺産の魅力や見どころなどについてトークセッションを連日行うほか、普段はめったに見ることのできない灯台のレンズの展示を行う。

 また、10月31日~11月8日、旧国立駅舎(東京都国立市)でも近代化遺産の紹介パネル展を開催し、11月3日にはトークセッションを予定している。

舞鶴旧鎮守府水道施設の旧第一配水池=京都府舞鶴市

先人の生命力感じて

 

 近代化遺産は、産業の大きな変革と技術の躍進が豊かなライフスタイルをもたらしたことは事実だが、近世の封建的な社会が崩壊し、激変する国際情勢の中で日本が世界の大国と対峙(たいじ)する手段であり、当時の国際社会の荒波を乗り越えるための手段であったようにも思える。

 昨今のコロナ禍において、現代社会の基礎ともいえる近代化遺産を見るとき、先人が困難に立ち向かおうとする姿や生命力を想像し、感じていただければと思う。そこに、先行きが見通せないコロナ禍を乗り越えるためのヒントが見えてくるのではないだろうか。

 近代化遺産は決して特別な存在ではない。私たちの身近にあり、町の歴史や生活に関わっている。一度失われてしまえば、決して元には戻らない貴重なものでもある。近代化遺産の一斉公開の期間にかかわらず、今一度皆さんの身近にある近代の息吹を感じることのできる近代化遺産を探してみてはいかがだろうか。

 全国近代化遺産活用連絡協議会のホームページは、https://www.zenkin.jp/

[筆者略歴]

長嶺 睦(ながみね・むつみ)

1977年沖縄県糸満市出身。京都造形芸術大大学院修了(文化財保存修復学専攻)。2012年舞鶴引揚記念館学芸員。2020年舞鶴市文化振興課で全国近代化遺産活用連絡協議会の事務を担当

 

(KyodoWeekly9月28日号から転載)

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