「言の葉の森」アスレチック

 「ここ、ちょっと違和感があるんですけど」

 職場の後輩からこんな相談を受けた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地の公園で遊具の使用制限が広がっているという原稿を読んでいる時だった。そこには「滑り台やアスレチック用の大型遊具」という文言が。特に引っかかるところがなかった私の頭には「?」が浮かぶ。後輩はこう言った。「アスレチック用の遊具って言います? アスレチックが遊具じゃないですか」

 「アスレチック」を辞書で引いてみると、どの辞書も載せている「体育。運動競技」(大辞泉)という意味がまず目につく。この意味でとれば、「アスレチック用の大型遊具」は問題なさそうだ。だが、「公園などにある、雲梯(うんてい)や滑り台などの複合遊具を配置した運動施設。また、その遊具」(新明解国語辞典)といった意味を載せる辞書も。「アスレチックが遊具(という意味)じゃないか」という後輩の言葉にも一理ある。

 では、そもそも「アスレチック」は英語ではどんな意味なのだろうか。

 英和辞典で「athletic」を引いてみると、リーダーズ英和辞典をはじめ複数の辞書が「運動(競技)の」という意味を載せていたが、「遊具」とする辞書は調べた限り無かった。三省堂国語辞典は「アスレチック」の語釈の②において、和製英語の「フィールドアスレチック」(=山林に、丸太やロープで遊び道具をつくり、自然にしたしみながら体力をつくるしくみ)と同義だとしており、「遊具」という意味はここから派生して定着したと推測される。

 ここまで調べた上で、後輩には「確かにそうだね。でも今回はそのままでいいかな」と伝えた。毎日新聞の過去記事では「アスレチック遊具」という表記もあること、「アスレチック」=「遊具」という意味にしかとれない、とまでは現状言えないのではないか、ということなどから直しは入れなかった。

 「校閲と添削の線引きは難しい」とは私の師匠である先輩校閲記者の言葉だ。「読者にとってわかりやすいものを届ける」のも使命である一方、人が書いたものに手を入れるというのはある種覚悟がいるもので、少しでも書き換えることで違う意味になってしまったり、わかりにくい文章になってしまったりしては元も子もない。「これなら読者にわかってもらえるだろう」というラインをどこに設定するのか、日々悩み続けているものだ。

 「アスレチック」、皆さんはどのような意味でとりましたか?

(毎日新聞社 校閲センター 加藤 史織)

 

(KyodoWeekly9月7日号から転載)

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