新常態とビアガーデン

写真はイメージ

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている中、今年の夏はこれまで経験したことがないものとなっている。その影響は各所で現れている。

 関西においても、大阪府の天神祭で例年行われている花火大会は中止となり、京都府の三大祭りの一つである「祇園祭」も神事を縮小して行うなど、その社会的影響は大きい。

 コロナ禍により夏に行われるはずだった各種娯楽が、今年はあまり楽しめない状況ではあるが、そんな状況下でも開催されているイベントがある。それはビアガーデンである。

 ビアガーデンといえば、夏の暑い時期に風通しの良いビルの屋上などで開かれ、各自でビュッフェ形式の料理を取り、多種多様なビールを片手に友人や会社の同僚と語りあい、暑気払いを行う場所である。筆者も毎年楽しみにしてよく利用しているが、今年は例年とは異なった形式で開催されている。

 感染防止策として、席の間隔をあけるソーシャルディスタンスがとられ、料理の提供もこれまでのビュッフェ形式ではなくなった。個別提供となるなど、ビアガーデンの多くは以前とは異なった形態がとられることが多くなり、利用客はその変化とうまく付き合いながら楽しんでいることであろう。

 これまでの形式が変わることで、今までのように大勢で楽しむということが難しくなっている現在だが、実はビアガーデンの歴史をさかのぼってみれば、社会情勢の変化に合わせてその形態を変容させていた。

 日本でビアガーデンが今のように屋上で開かれるようになったのは、大阪梅田の地下にあったビアホールが、企業の展示会で大勢の招待客に屋上でビールと食事をふるまったことが初めだとされている。当初、地下でふるまう予定であったが、諸事情により、屋上で開催したところ盛況となり、「ビアガーデン」という名称で1954年に正式にオープンした。

 その後、ビアガーデンは各地に展開され、1964年の東京オリンピックごろにそのブームは隆盛となるが、70年代後半以降はエアコンの普及と当時大きな環境問題となっていたスモッグなどの影響もあり、ブームは落ち着きをみせた。

 その後、ビアガーデン人気は一服したが、ビアガーデン自体は料理に工夫を凝らしたものやスポーツ中継を放映するなど、新しい業務形態が出現し、その人気が落ちることはなかった。

 このようにビアガーデンはその時々の社会情勢の変化があったものの、現在でも根強い人気を維持し、夏の風物詩として着実に人々に定着し続けている。

 今では当たり前となっているビアガーデンだが、歴史を振り返ってみれば、社会の変化にあわせながら、従来の形態を時代ごとに変えることで、現在でも夏の風物詩としての文化が継承されている、と筆者は感じる。

 こうした文化を受け継いでいくためには、変化にどう向き合い、それをどう受け入れていくかどうかが大事なのではないか。コロナ禍というのは、これまで経験したことのない、社会変化を伴うものかもしれない。

 しかし、その変化とうまく付き合うことが、コロナと共存していかなければならない、ニューノーマル(新常態)の時代に適応する文化として必要であろう。筆者はビアガーデンの歴史を通して、そう考える。

(アジア太平洋研究所 研究員 野村 亮輔)

 

(KyodoWeekly9月7日号から転載)

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