リツイート判決が投げかけるもの

 SNS(会員制交流サイト)をごく普通に使っていたら、ある時突然、違法行為を問われ、裁判所から個人情報の開示を命じられた―。ほぼ1カ月前に大きく報じられた最高裁判決を、ごく大ざっぱに言うとこんな感じだ。見出しは「転載時の画像トリミング、リツイート者の権利侵害認める」という内容。いったい何が争われ、最高裁の判断から私たちは何を学ぶべきか。

 詩や小説、絵画、音楽など何であれ著作物をつくった人には、著作者人格権という創作者に固有の権利がある。①作品を公表するかどうか、②公表する際に著作者名(ペンネームを含む)を表示するかどうか、を自ら決められるほか、③意に反する修正や変更をされないという三つの権利を持つ。財産権である著作権とは別に、著作者に敬意を払い、尊厳を守るのが目的だ。

 今回、最高裁が認めたのは、②の氏名表示権の侵害。ある写真家が自身の作品をネットに掲載していたところ、複数のツイッターユーザーがその画像ファイルを無断でプロフィル画像に使用したり自分のタイムラインに掲載したりした。これらは明らかな著作権侵害だ。そこに争いはない。

 問題は作品画像を無断で掲載したツイートが「リツイート」(自分のフォロワーに他人のツイートを読ませる転載機能)された際に、表示された画像の上下が自動的にトリミングされ、元画像にはあった撮影者の氏名表示が見えなくなってしまった。

 これは著作者の氏名表示権を侵すもので、プロバイダー責任制限法にいう「侵害情報の流通」によって写真家の権利を侵害したと、またリツイート者が「侵害情報の発信者」であり、彼らへ直接通知する手段としてのメールアドレスの開示を米ツイッター社に求めた二審・知財高裁判決を支持した。

 ネット上はもちろん、専門家の間でも批判的な声が目立った。「トリミングはリツイート時に画像を簡易表示させるよう設計されたサービス上の仕様で、もとよりユーザーは回避できない」「画像が適法かの確認など、ユーザーに過度な負担を強いて、情報の自由な流通を萎縮させる」などだ。

 林景一裁判官は反対意見の中で、わいせつ画像や誹謗(ひぼう)中傷など元ツイートはもちろん、リツイートによる拡散が許されないケースがあることを踏まえつつ、今回の画像をそれらと同列に論じるのは酷だとも述べている。

 一方、戸倉三郎裁判長は、ネット上で他人の著作物を含む投稿をする際に必要な確認作業などある程度の配慮は当然だと、また氏名表示権の扱いをSNSだから特別軽くする理由はないとも言う。これもまた正論だろう。

 来年1月施行の改正著作権法では、私的な目的であっても、違法にアップロードされていると知りながら行う画像の保存やスクリーンショットは、軽微なものを除きアウトになる。

 また、画像検索などには出所のわからない、中には明らかに無断で掲出されたであろう画像が無数に出てくる。これらが違法ツイートの温床になり得るとすれば、クリック一つがはらむリスクについて、日ごろからアンテナの感度を磨いておくに越したことはない。判決はそんな警告ともとれる。

(知的財産アナリスト 竹内 敏)

 

(KyodoWeekly8月31日号から転載)

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