
自然食品の店となった西海みずき旧本店=8月3日(筆者撮影)
長崎県佐世保市のアーケード商店街は、直線につながったアーケードとして日本一だ。西海みずき信用組合の旧本店は、その一角にあった。
一般に金融機関の店舗は、平日午後3時以降と土、日曜日は閉まっている。商店街のにぎわいに水を差す存在だ。
ようやく昨年秋に本店を移転。その跡を空き家にすることなく、食と陶器のセレクトショップに入ってもらった。このことを先日の商店街の会合で感謝され、高く評価された。
かつて空き店舗ゼロが自慢だったアーケード商店街にもこのところシャッターが目立ってきた。建物が老朽化しても地主・家主は賃料値下げを拒むため、借り手がなかなか見つからないようだ。
そうした中、旧本店も含め建物が老朽化した一帯を再開発しようという機運が盛り上がりつつある。となると、工事着手前に速やかに退去することを条件にしなければならず、借り手探しはますます困難になる。そこで単純だが、賃貸料を大幅に値引きした。でもそれでよかったと思う。空き店舗にしてにぎわいを失わせる訳にはいかない。
さて、佐世保のアーケード街で銀行といえば親和銀行本店だが、実はこれが建築ファン感涙の名建築だ、と県外に住む知人に最近教わった。アーケードにさえぎられ全貌は見えないし、重厚な壁は近寄りがたく、これまで素通りしていた。
しかし、これが建築家白井晟一の代表作とのことだ。磯崎新設計の旧福岡相互銀行本店が解体されることで一層、貴重となった。建築ファンの聖地のほか、フォト婚スポットなどとして休日にもにぎわう場所になりうる。
にぎわいといえば、先般「夜直しパーティ」という小さなイベントが開催された。金曜日の夕方、商店街に隣接する歓楽街の中の公園(防火帯)と道路を会場に、飲食店が間を空けて出店し、結構なにぎわいとなった。楽しげな声が屋外に響き、久しぶりに開放された気分になった。
公園や道路を飲食店のテラス席として利用できれば、有力な3密回避の手段となるし、まちは大いににぎわう。公園や道路の使用にはさまざまな規制があるようだが、ぜひそれを撤廃・緩和し、コロナ禍でのにぎわいを下支えしてほしい。
ところで、コロナ禍で「密」はアウトだが、「にぎわい」はセーフか? どの程度のにぎわいであればセーフか?
佐世保の商店街も、かつては歩けば肩がぶつかったというけれど、今はそんなことはまずなく、すれ違うときは平均1メートルぐらいは間隔を保つことができる。
おそらくコロナ禍でも許容される「にぎわい」であろう。また、屋外テラス席も、室内に比べて感染確率は低いだろう。にぎわい創出に、憂いなく取り組むためにも、そのあたりを科学的知見に基づき、明確にしていかなければならない。(敬称略)
(西海みずき信用組合理事長 陣内 純英)
(KyodoWeekly8月24日号から転載)