コロナ禍、大学教育の現状と課題 非対面授業に限界も

 今般のコロナ禍により、あらゆる社会生活の変化への対応を余儀なくされている。さはさりながら、先送りにできない代表的な分野に、医療、介護のみならず、教育も含まれるだろう。ここでは、高等教育の大学の現状と課題をまとめた。

日本大学=7月22日(筆者撮影)

 教育分野については、自民党内で結成された「秋季入学制度検討ワーキングチーム」の下で9月入学が検討され、5月12日には第1回役員会が開催された。

 しかしながら、「国民的合意が得られない中で今年度・来年度のような直近の導入は困難」という6月2日の提言書をもって、事実上の断念に至った。

 そうした一方、4月16日に緊急事態宣言が全都道府県に拡大される中で、多くの大学で入学式が中止され、大学構内への学生の立ち入りも禁止された。5月25日の緊急事態宣言の全国解除後には、早いところで6月くらいから大学構内への学生の立ち入りを認め始めた動向がみられる。

 そんな中でも、東京都など“第2波”の発生が懸念される地域では、一度立ち入りを認めた後にやむなく禁止に戻す動きがみられるなど、大学当局側の苦渋の選択がうかがえる(表)。

 こうした立ち入り禁止期間中も、ビデオ通話アプリを介したオンライン講義での創意工夫を繰り返すなど、関係各位の尽力には改めて頭が下がる。しかしながら、相応の装置が必要となる理系学部の実験科目など、非対面の代替手段には限界も認められるもようだ。

 

「におい」感じ取れない

 

 理系学部の教員からは、「数理科学・管理工学など、手の込んだプログラミングを要する学科では『むしろ非対面形式の方がはかどる』という声が例外的にみられるが、大多数は『これからどうしよう』な状態だ」という本音も聞かれる。

 もちろん個々の大学・学部・教員による違いはあるものの、模索される理系学部の対応の中身には、ある程度の共通性もみられる。

 すなわち、4年生・大学院生に優先的に大学構内立ち入りの特別認可を与え、春学期(前期)の通常講義をオンライン配信形式とし、実験科目では実技に代えてシミュレーション方式を導入するものだ。

 その上で、それでもこなせない、どうしても実技が必要な実験科目などを秋学期(後期)以降に行うことが平均像のようだ。

 そうした中でみられている課題も、地域をまたいで共通傾向がうかがえる。

 筆者が取材時には、各地の教員より、学部生・大学院生・教員が集まって“前や横”を見ながら考察し合う中で相互に思考力・分析力を高めていく教育技術が使えないことに悩む同様の声を複数聞いた。長年、その高度化を前提として指導や研究を行ってきた中で、代替策をと言われても正直言って浮かばない、という本音もみられた。

 技術の伸展は目覚しいものの、オンライン時に使用されるカメラを介することで視線が固定し、視野率も制限される。

 この結果、実寸・実色・実形が目視できず、においなども感じ取れないことが、理系科目にとって大きなハンディキャップになることは想像に難くない。教員からは「研究室内のやり取りをZoomで行っているものの、とにかく議論が白熱しない」「週1回(チャットサービスの)Slackで通話しているが、意見が出ないため教員の一方通行になりがち」などの悩みも数多く寄せられた。

 

一度も顔を会わせず

 

 また別の課題に、立ち入りを認めた大学でも大学構内での感染可能性を排除し切れないため、対面授業を避ける意向を持つ学生に出席を強要することが禁じられる一面もみられるもようだ。

 故郷から大学近隣に引っ越して通学を予定していた新入生が親元をまだ離れていないなど、入学後一度も大学に来ていない学生も少なくない。同級生・同窓生と一度も顔を会わせないため、友人関係が構築される以前の環境となっていることに教員側も非常に腐心し、相応のケアに追われる実情がみられる。

 教員からは、自宅での研究のため、研究室から学生のアパートに特殊な演算処理のできる大型パソコンを運ぶのを何度も手伝った結果、何人もの学生の就寝場所がまったく無くなったという逸話を聞いた。

 そんな苦笑いの話の一方で、設備の備わった環境下で実験を行う時間が思うように確保できず、やむなく留年を視野に入れる学生からの相談に悩む声や、大学院入試水準の調整に悩む声も筆者に入ってきた。

 感染症法上の指定感染症ゆえ、軽々に取り扱えない一方で、理系学部など高等教育への影響が長期化すれば、国力の低下に直結しよう。

 布マスク配布や、「Go To トラベル」も重要だろうが、コロナ禍における学校現場を取り巻くさまざまな問題に目を向け、将来の日本を支える若者たちの教育環境を整備することは喫緊の課題である。

【筆者】

信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役

佐々木 城夛(ささき・じょうた)

 

(KyodoWeekly8月10/17日号から転載)

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