「口福の源~食料」宅配水市場が迎えた変革期

 ウオーターボトルをサーバーにセットして利用する宅配水は、2011年の東日本大震災を契機に注目された。

 日常の利用と同時に「備蓄水」としての役割が期待できることや、冷水、温水が利用できるといった利便性が消費者から支持され、多くの企業が事業に参入して市場は活況を呈した。

 宅配水の形態は、使用容器を回収しリユースするリターナブル方式と、一回使い切りの容器を宅配するワンウエー方式の二つに大別される。

 市場の形成期はリターナブル方式が主流であったが、初期投資が安く抑えられるため、近年の新規参入企業はほとんどがワンウエー方式を採用している。

 宅配水のメインターゲットは子育て世代を中心としたファミリー層であり、乳児の調乳用を含め、子どもに与える水をきっかけにサービスを利用し始める顧客が多いことから、多くの企業が「ママ」や「妊婦」をキーワードにした購入プランを用意している。

 これまでは首都圏を筆頭に近畿圏、中京圏など大都市圏での営業展開が中心であったものの、近年は地方都市での顧客獲得にも力を入れるようになり、ショッピングモールなどでの催事も増えている。

 順調に拡大が続いてきた宅配水市場であるが、競争環境が激化したことで、新規顧客1件当たりの獲得費用単価が高くなり、収益確保に苦慮するようになってきている。

 このところ、参入企業を悩ませているのが、宅配事業者による配送料金の値上げであり、ワンウエー式を採用する企業は商品の値上げを余儀なくされている。

 宅配水はストックビジネスであり、顧客件数を伸ばすことが安定成長には不可欠である。ただ、新規顧客の獲得ペースが落ちる中で、各社が顧客の解約抑止に向けた取り組みや、長期契約を促す工夫に、より注力するようになっている。

 岐路を迎えている宅配水市場で、注目を集めているのが、宅配水と浄水器・製水器の中間的な位置付けともいえる「水道直結型ウオーターサーバー」である。

 サーバーに水道水を引き込み、内蔵した高機能浄水フィルターを通して本体内のタンクに貯める仕組みで、水の使用地点(Point Of Use)の頭文字からPOUと呼ばれる。日本ではまだそれほど普及していないものの、韓国では一般的なシステムである。

 POUと異なり、サーバー本体に手動で水道水を注ぎ入れるタイプの「浄水器一体型ウオーターサーバー」を展開する企業も出てきている。

 POUや浄水器一体型ウオーターサーバーには、配送コスト高騰の心配がなく、輸送費や人件費を抑えることが可能である。

 宅配水参入企業も関心を示すようになっており、すでにPOUや浄水器一体型サーバーを別ブランドで展開する動きも見られる。

 ウオーターサーバーの品ぞろえの一つとして、これらを検討する企業も増えてきており、宅配水との両立を図る動きが始まっている。

(矢野経済研究所 フードサイエンスユニット 主任研究員 幕田 宏明)

 

(KyodoWeekly8月3日号から転載)

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