「落語の森」食べ物あれこれ(サ行)

 先々代(三代目)桂三木助師がマクラでよく演(や)っていた。「そっちは何が好きだい?」「刺身ィ」「えらいッ。これはいいねェ、酒によくって飯にいいんだからね。やっぱり…なにかい? 山葵(わさび)ィ利かして…?」「いやァ、ジャムつけて」

 身(しみ)は、いろんな噺(はなし)に登場する。多くの演者が演るのが「厩(うまや)火事」、昼間っから刺身で一杯やっている若い亭主の本心を試そうと髪結い稼業のカミさんが亭主の大事にしている皿をわざと割って…という噺。男の本性を言い当てた素晴らしいサゲ! 先代(八代目)桂文楽師の十八番(おはこ)。柳家小三治師・三遊亭小遊三師・春風亭小朝師どれも良い。

 刺身用の油(たじ)を客に持って行って取り巻くのが「居残り佐平次」、幕府公認の廓(くるわ)でなく品川遊郭が舞台。立川談志師の名演が浮かぶ。三遊亭圓生師は「おこわにかけやがって」「旦那の頭がごま塩ですから」とサゲていた。「佐平次の非常識さ・生き方が大好きなんだが、サゲが分かりにくい」と談志師「野郎、表でなく、裏から帰して…」「あんな奴に裏ァ返されたら、あとが怖い」と変えた。2度目のことを「裏を返す」といった廓(さと)ことばを巧みに粋に生かしたこのサゲ! 立川談春師もこれで演っていた。

 んまといえば「目黒のさんま」だが、他に「さんま火事」「さんま芝居」がある。いずれも今あまり聴く機会がないが「さんま火事」は、元噺家で紙切りの先々代(初代)林家正楽師の作。「さんま芝居」、先々代(二代目)三遊亭圓歌師から先代(三代目)や三笑亭笑三師に伝わった。笑三師はつい2、3年前まで90歳を過ぎても高座を務めていて、二代目圓歌師の売り物「呼び出し電話」やるめが出てくる「てれすこ」をよく演っていた。この「てれすこ」、先日七代目を継いだばかりの上方の笑福亭松喬(しょきょう)師が高座にかけていた。

 い)の実が好物という仙人が登場するのは「鉄拐(てっかい)」、「この噺に興味を持たない落語家に私は興味はない」と言い切っていた談志師の独壇場。人間臭い仙人がその術で寄席に出、人気者になり、すっかり酒色を覚え…という噺。談志師のあふれるほどの笑顔と自在な高座! 30年ほど前か、新宿紀伊國屋ホールで立川流Bコース真打ち・立川藤志楼師(放送作家・高田文夫)のそれはギャグだくさんの「鉄拐」を聴き、笑った。

 談志師の師匠・先代(五代目)柳家小さん師「なにができんだ? 花巻にしっぽこ?」とくると「時ば」、本来は長崎料理っぽくを小さん師は「しっぽこ」と言っていた。三遊亭白鳥師にインド人そば屋が出てくる「アジアそば」や「トキそば」という傑作がある。新作に出てくる寿司(し)は、柳家喬太郎師作の「寿司屋水滸伝(すいこでん)」、洋食修行しかしていない店主の寿司屋で唯一の板前が店を辞めてしまい困った店主が…というてんやわんや。新作派の春風亭百栄師や古典派の演者にも伝わっている。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly7月20日号から転載)

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