逆風の高級食材

鮮魚店に張られたポスター=6月22日、東京都武蔵野市(筆者撮影)

 朝から風も雨も強かった6月22日、郵便を出す必要に迫られたため好機をうかがったものの、結局夜まで捕らえることができず、あきらめてポストに向かう羽目になった。ついでに夕食用の食材を購入すべく駅ビル商業施設に立ち寄り、鮮魚店でアサリを買い物かごに入れ、ほかの魚を選んでいた。その時、店員に呼び止められ、刺身用のマダイのパックを渡されたのだ。

 聞けば試供品のため無料で、店内での商品購入者を対象に配布しているとのことだった。これまで、ガムやヨーグルトなど完成品の試供品を受領したことはあったものの、生ものである鮮魚を配られたことはなく、とても驚いた。改めて見渡せば、実施を告げるポスターのそばに多数のパックが置かれており、店員からは、業界団体が政府の補助金を活用して実施した施策と説明された。

 帰宅後に調べてみると、国産農林水産物等販売促進緊急対策の補助金が使われているもようで、総額は1400億3700万円。予算規模の多寡については判断をしかねるが、6月1日現在の総人口の概算値である1億2593万人で除すと、国民1人当たり1112円となる。3月ごろに検討され、批判も相次いだ「お肉券」「お魚券」に代わる支援施策の一つに該当しよう。

 食料自給率の維持・向上や地域産業の育成などのため、第1次産業には、一定の費用を投じた保護が必要となろう。農産物や養殖魚の場合、今般のコロナ禍などの外部要因によって短期間に需要が大幅に落ち込んでも、急に生産調整を図ることは難しい。一方で、一度ブランド価値を毀損(きそん)させてしまえば、改めて引き上げるためのハードルが上がるため、足元を見たバイヤーに買いたたかれるくらいならば、配ってしまおうと決断した向きもあろう。

 消費者側に目を移せば、感染拡大防止のため、歓送迎会や接待の自粛が続く見通しだ。複数の調査機関からは、夏の賞与だけでなく、冬以降の賞与についても減額予想が相次いでいる。

 働き方改革に加え、時差出勤やテレワークが定着する中で営業時間を短縮させたままの商業施設も多く、商品が店頭に並ぶ時間自体が短くなっている。さらに、食材購入時も最少人数・最短時間での対応が求められたままのため、じっくり品定めする余裕が持てない向きもあろう。いずれも、高級魚にとっては逆風だ。

 販売促進には、味わって体験してもらうほか、栄養価や料理法、生産コンセプトなどを紹介・浸透させることなども考えられる。コロナ禍での高級食材のリピーター獲得には、今後、さらに知恵が求められることが避けられないと考える。

(信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役 佐々木 城夛)

 

(KyodoWeekly7月13日号から転載)

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