どんな映画の中にも必ず“人生”が描かれている。それゆえ、監督や脚本家が知恵を絞って、つむぎあげた名ぜりふは、人生を生きるための知恵の宝庫ともいえるのだ。コロナ禍の今だからこそ、明日を豊かに生きるためのヒントが得られる映画の名ぜりふをご紹介したい。
名ぜりふシリーズ【後編】:https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-09-02_3083436/
「イエスマン“YES”は人生のパスワード」(2008)
ネガティブな人生を変えるべく、あらゆることに「イエス」と答えると誓いを立てた男(ジム・キャリー)。人生が好転し始めた彼はこんなせりふを言う。
「全てを受け入れたら人生が変わってきた/I wasn’t open to stuff, and now I am… and things are changing for me.」
「エデンの東」(1954)
厳格な父(レイモンド・マッセイ)は、こう語りながら息子(ジェームズ・ディーン)に正しい選択を迫る。やがて病に倒れた父に今度は息子が同じ言葉を問い掛ける。
「人間は選択することができる。そこが動物とは違うところなんだ/Man has choice and it’s a choice that makes him a man.」
「お熱いのがお好き」(1959)
やむを得ず女装した男(ジャック・レモン)が、富豪の男(ジョー・E・ブラウン)からほれられる。困った彼はかつらをとって「俺は男だ」と告白。ところが富豪は意に介さずこう言い切る。
「この世に完全な人間はいないさ/Well, nobody’s perfect!」
「オズの魔法使」(1939)
魔法の国に迷い込んでしまった少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)。彼女は家に帰るためにひたすらこう念じる。
「やっぱりおうちが一番/There’s no place like home!」
「風と共に去りぬ」(1939)
南北戦争を背景にした一大巨編。ヒロイン、スカーレット(ビビアン・リー)はラストで全てを失ったかに見えたが、不屈の精神を持つ彼女は、この一言で自らを励ます。
「そうだわ。明日という別の日があるわ/After all…tomorrow is another day.」
「グラン・トリノ」(2008)
隣に住むアジア系の少年を一人前の男にしようとする老自動車工(クリント・イーストウッド)。彼はさまざまな工具を前に少年にこう教える。
「どの工具にもそれぞれにちゃんと役目がある。どれもいざというときに役に立つ/Well, every tool in here has purpose. Everything has a job to do.」
「グレムリン」(1984)
街で大暴れしたグレムリン。持ち主である中国人の老人が、グレムリンと対話する方法を主人公(ザック・ギャリガン)に教える。
「心の耳で聞けば、何でも分かる/To understand, one has only to Listen.」
「ゴッドファーザー」(1972)
イタリアンマフィアのドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)は、自分の家族とマフィアのファミリー=組織の大切さをこんな言葉で表す。
「家族を大切にしないやつは男じゃない/Never tell anyone outside the Family what you are thinking again.」
「ジャイアンツ」(1954)
テキサスで大牧場を経営する夫婦。彼らはしばしば派手なけんかをするが、互いを尊重しているから仲直りも早い。妻(エリザベス・テイラー)が夫(ロック・ハドソン)にこう語り掛ける。
「けんかのいいところは仲直りができることね/The best part about quarreling is making up.」
「ショーシャンクの空に」(1994)
無実の罪で服役し、長い年月をかけて脱獄した主人公(ティム・ロビンス)が、出所後、希望を見失いかけた刑務所仲間(モーガン・フリーマン)への手紙にこう書いた。
「希望はいいもんだ。多分最高にいいものだ。いいものは決してなくならない/Hope is good thing, maybe the best of thig, and no good thing ever dies.」
「スターマン/愛・宇宙はるかに」(1984)
若き未亡人(カレン・アレン)のもとに、亡き夫のDNAを利用して夫そっくりに変身した異星人(ジェフ・ブリッジス)が現れる。彼女はこんな言葉で異星人に愛の意味を説明する。
「愛とは自分よりも相手を思うこと。そして相手が自分の一部になること/Love is, um, it’s when you care more for someone else than you do yourself. 」
「素晴らしき哉、人生!」(1946)
クリスマスの夜に1人の男(ジェームズ・スチュアート)の身に起きた奇跡。人生に絶望し自殺しようとした彼のもとに落ちこぼれの天使が現れ、こんな言葉で彼を励ます。
「1人の命は大勢の人生に影響しているんだ。1人いないだけで世界は一変する/Each man’s life touches so many other lives, and when he isn’t around he leaves an awful hole, doesn’t he? 」
「世界中がアイ・ラブ・ユー」(1996)
ウディ・アレン監督のミュージカルコメディー。それぞれが悩みを抱える家族に、死者(幽霊)たちが踊りながらこう歌う。
「今を楽しめ。手遅れになる前に。今を楽しめ/Enjoy yourself…it’s later than you think. Enjoy yourself…」
*「人生を豊かにするための50の言葉―名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方」(近代映画社刊)から抜粋。(注)日本語のせりふは、もとの英語の直訳ではないのでご留意ください。
(映画ライター 田中 雄二)
(KyodoWeekly6月22日号から転載)