「風のたより~地域経済」「希望出生率1・8」への希望

 5月、今後5年間の子育て支援の指針となる第4次少子化社会対策大綱が閣議決定された。「希望出生率1・8」の実現に向け、子どもを安心して産み育てられるよう、不妊治療支援や、児童手当の拡充などに取り組むことが盛り込まれた。

 「希望出生率」とは、若い世代が有する結婚、子どもの数などの希望がかなうとした場合に想定される出生率であり、各種調査の結果から1・8とされている。政府は、幅広い少子化対策や子育て支援策、さらには働き方改革などによって、合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む子どもの数に相当)をこの水準まで引き上げることを目標としている。

 近年、わが国では少子化が加速しており、出生数は2016年に100万人割れとなったばかりであったが、2019年には、早くも90万人を大きく割り込み86万4千人となった。もう1人子どもを持つことを断念する若い夫婦が挙げる理由の第1は、経済負担の大きさであり、その改善なくして出生数の回復は期待できない。

 1990年代後半にあった金融危機以降、わが国では雇用の非正規化の動きとともに、若い世代の賃金が低水準に抑えられてきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、若い世代の雇用・所得環境の厳しさに一層拍車がかかることが懸念される。

 現状、わが国の社会保障制度を欧州諸国と比較すると、若い世代向けの社会支出の少なさが際立つ。わが国の家族向け社会給付額は、国内総生産(GDP)対比でみると1・43%と、イギリスの3・46%、フランスの2・93%の半分にも満たない。なお、家族向け社会給付には、児童手当や育児休業補償費、保育施設整備費などが含まれる。

 わが国が、フランスの水準まで家族向け給付を増やすとすれば、約8兆円の追加投入が必要となる。今後の少子化対策では、若い世代の暮らしを支える家族向け社会給付の大幅な増額が望まれる。

 ただ、家族向けの社会給付額を増やしても、必ずしも出生率が高まるとは限らない。実際、手厚い子育て支援策などで有名なフランスでも、一時は2・0を超える水準まで回復した合計特殊出生率が、足もとでは再び低下傾向にある。

 さらに、新生児の4人に1人は、少なくとも片方の親は外国籍であり、フランスの出生数が、先ごろまで移民としての流入が顕著であった外国人により押し上げられていることは否定しえない。その一方で、フランス人同士のカップルの子は、長期にわたり減少傾向に歯止めがかからず、近年は減少のペースに拍車がかかっている。

 このように社会保障政策などによって、子育て環境を改善しても、それが直ちに少子化からの脱却につながるとは限らない。しかし、若い世代の社会保障を充実させるとともに、彼らの雇用・経済環境を改善してゆくことは、わが国が持続的に発展するうえで、必要不可欠な取り組みである。官民が一丸となり、若い世代が自らの夢や希望をかなえやすい社会基盤を築いていくことが望まれる。

(日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 藤波 匠)

 

(KyodoWeekly6月22日号から転載)

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