持続的な支援体制の構築を コロナ禍の高齢者の生活

 新型コロナウイルスの感染拡大が、高齢者の日常生活にさまざまな悪影響を引き起こしている。持病のある方や要介護者はもちろん、自立した生活が可能であった高齢者までもが、これまで利用してきた日常生活に必要なサービスを受けることができない事態に直面するケースが相次ぐ。以前から、人口減少が進む地域では、高齢者が抱える生活上の多くの問題が顕在化していたが、今回のコロナ禍により社会環境が急激に変化したことで、それらが全国的な課題としてクローズアップされるようになった。

 

買い物・医療難民

 

 新型コロナの感染拡大に伴い、医療機関や介護施設、送迎バス、一般商店など、生活・社会インフラにおいて、事業の休止や縮小が相次いでいる。

 このため、持病のある高齢者や、要介護者の中には、必要な医療や介護を受けることが難しくなった人も出てきている。日々の健康管理や状態確認が十分にできないことから、持病や介護度が悪化する高齢者も報告され始めている。

 介護の必要がない高齢者や、自立した生活を送ってきた高齢者にとっても、利便性の低下が生じ始めた。地方の農山村のみならず、都市部においても、車などの移動手段の確保が困難な地域では、〝買い物難民〟や〝医療難民〟が生じつつある。

 コロナ禍前であれば、こうした地域では、ボランティアやNPO法人などが、高齢者の移動支援にあたってきたが、感染拡大防止のため活動を制限する団体も少なくないのが現状だ。

 現在、高齢者の生活に生じている幅広い弊害は、感染拡大防止のため、3密(密閉、密集、密接)のリスクのあるサービスや人の移動の制限により生じている。

 しかし、人口減少地域では、それ以前からさまざまな高齢者サービスの供給に支障をきたしており、深刻な社会問題となっていた。人口減少に歯止めがかからず、働き手の確保が難しいことに加え、需要の減少により事業として成り立たなくなってきているためである。

 本来、医療や介護は、ユニバーサルサービスとして、いかなる状況にあっても維持されるべきである。

 ただ、総じて低収益で労働集約的な産業のため、必要な人手や一定以上の利用者を確保できなければ、事業の継続は難しい。

 とりわけ過疎が進行している地域では、営利目的の小売店ばかりではなく、医療・介護や生活支援サービスまでもが、採算が合わないとして、撤退や事業規模を縮小させている。

 つまり、人口減少や生産性の低さなどから持続的な供給が懸念されていた各種の高齢者サービスが、今回のコロナ禍により、一気に課題を露呈したといえる。

 コロナ禍の終息により事態が好転するとの見方もあるものの、一部を除き、多くの地域で人口減少が避けられないことを踏まえれば、早晩、各地で高齢者が自立的な生活を送ることが困難となるのではないか。

 

有効な解決手段は?

 

 こうした事態を回避するには、人口減少下にあっても、持続的なサービスの提供を可能とする体制の構築が不可欠である。

 そのためには、より少ない人手で、効率的にサービスを提供することが重要であり、ロボティクスや情報通信技術(ICT)などの先端技術を積極的に活用し、作業負担の軽減や業務の効率化・簡素化を図ることが有効だと思われる。

 すでに、在宅の高齢者の安全確認や見守りに、職員の巡回にそれぞれ代わって、専用機器の設置や、湯沸かしポットなど日常的に使用される家電を利用したシステムが広く導入されている。このほか、インターネットや電話・FAXで注文を受け商品を配送するサービスも一般的となった。

 また、コロナ禍をきっかけとして、オンライン診療をはじめ、ウェブ会議システムを利用したリハビリテーション指導や、趣味教室・講座など、さまざまなサービスがオンライン上で提供され始めた。

 電話や単なる動画配信とは異なり、画面を通して双方向でやり取りができるため、顔色や表情の確認のほか、コミュニケーションの維持が可能であるとして、期待されている。

 このほか、実証実験段階にあるドローンによる配送や自動運転車を利用した交通システムも、買い物難民や医療難民の有効な解決手段として注目されている。

 こうしたサービスのデジタル化に加え、介護産業にもテレワークなど、業務の効率化に向けた取り組みが始まっている。

 総務省のテレワーク事例集には、介護スタッフが作業のたびにタブレット端末に実績を入力することで、移動時間の短縮やペーパーレス化が進み、作業効率が向上した地方圏の訪問介護事業者のケースが報告されている。

 今回のコロナ禍は、高齢者の日常生活にさまざまな弊害をもたらしたことは事実であるが、一方でこれまで指摘したように、上記のようにICTなどの導入を促し、課題解決のためのツールや選択肢を増やしたとみることも可能である。

 サービス提供者は、従来のやり方にとらわれることなく、新しいツールを積極的に取り入れ、持続可能な高齢者の支援体制を構築する好機ととらえ、取り組みを加速する必要があるだろう。

[筆者]

日本総合研究所副主任研究員

星 貴子(ほし・たかこ)

 

(KyodoWeekly6月8日号から転載)

新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ