「落語の森」夏の噺

 「怪談牡丹灯篭(ぼたんどうろう)」「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」といったコワイ噺(はなし)は、また後日。

 東西の寄席でよく聴くのが「青菜」、笑いの多い噺で演(や)り手も多い。先代(五代目)柳家小さん師は「植木屋さん、菜はお上がりか」の一言でお屋敷の旦那を彷彿(ほうふつ)とさせた。寄席で便利なのが、「あくび指南」、あくびの稽古をするという「無駄の極み」のような噺。それほど長い噺ではないので、マクラに「けんか指南」「釣り指南」などを持ってくれば長い噺にもなる。古今亭志ん朝師のが楽しかった。今だと、柳家小三治、春風亭一之輔、古今亭文菊師らがいい。かつて立川談志師は「これぞ落語!」と言い、筆者の手元に師直筆の「粗忽(そこつ)長屋・欠伸(あくび)指南・あたま山、深いネェ~」と書かれた木片がある、落研時代後輩だった噺家さんが「先輩、欲しいでしょ!」とくれた。

 「応挙の幽霊」、掛け軸の幽霊が抜け出して…、という静かな噺。地味を絵に描いたような先代(六代目)蝶花楼馬楽師が演っていた。今、三遊亭兼好師が演っているらしいがいまだ聴く機会がない。同じ幽霊でも「お菊の皿」は、打って変わってにぎやか! かの「皿屋敷」を下敷きにした演者の演り用でどうにでもなる地噺(じばなし)。筆者もオリジナルのギャグを入れて演っている。AKBが出てくる春風亭小朝師のは笑える、師のセンスには脱帽。

 「強情灸」は見せる噺。江戸っ子の見栄を楽しく聴かせてくれる。灸の熱さに小さん師の丸い顔が徐々に赤くなってくるのが見せ場だった。灸を据える際「柳家」だと手の平を上に向け、「古今亭」だと甲を上に向けることを知った。昨年、筆者がこの噺を稽古しようと立川キウイ師にアドバイスを仰いだ時だ。この時まで知らなかったァ!

 「佃祭り」、8月の祭りの帰りの大惨事が発端。落語では珍しく大勢が亡くなる。先代(三代目)三遊亭金馬師が演り、今も柳家権太楼・瀧川鯉昇師ら演り手は多い。ただサゲがあまりにも分かりにくい。今「梨と歯痛の関係」をご存じの方っています?

 「永代橋」は「佃祭り」に似たシーンが出てくる。が、こちらのサゲは、くだらなくて分かりやすい。「太兵衛(多勢)に武兵衛(無勢)は、かなわない」というんだから。

 「二十四孝」は、「親孝行くれェ野暮なこたァねェ」という江戸っ子の了見を描いた噺。サゲのおっかさんのセリフを子供の時に聴き、笑った。意表を突いた素晴らしいサゲ!

 「紀州」は、七代家継から暴れん坊将軍八代吉宗への跡目相続の噺。落語協会にかつてこの「紀州」のような出来事があったことは、好事家にはよく知られている。1982(昭和57)年、先代(十代目)金原亭馬生副会長が早世し、さて次期副会長を誰に!とここからが面白いんですが、残念ながら誌面が尽きました、ってこれじゃ伯山先生の講談だよ!

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly6月1日号から転載)

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