「風のたより~地域経済」NPOのお金の壁

 新型コロナウイルスの感染拡大で、筆者が校長を務める大杉谷(おおすぎだに)自然学校(三重県大台町)は3月から体験活動を休止している。自然体験や環境教育をしている、全国の自然学校でも仕事が激減し、既に経営に影響が出始めているところが多いようだ。

 雇用を守るため、賃金の一部に使える助成金情報が早々にメールで流れてきたのだが、雇用や経済に関する助成金にはあまりなじみがない。過去に活用した助成金は、主に環境保全などに関するもので、対象が謝金や物品などの事業費に限られ、賃金や運営費まで対象となる助成金は数少なかった。だから、賃金に使える助成金が存在すること自体が驚きなのである。

 6年前に職員の1人が出産することとなった。産休育休を支援する助成金について担当者が、町内の相談機関に問い合わせたのだが「NPOは対象外」との返事だった。2度目の出産時は、NPOでも確かに対象となることを自分たちで確認し、育児休業等助成金をいただくことができた。この助成金では、当校は中小企業の分類だったのだが、NPOが中小企業の分類だったことには意外な気持ちがしたものだ。

 実は助成金申請にあたり、企業であれば当然備えていただろう雇用労働についての書類が一部なく、作成に苦労した経緯があった。NPOだから雇用労働環境の整備などは二の次という気持ちがどこかにあった。

 筆者は20年以上前、北海道の自然学校で1年間の研修をした。職員と同じように働き、月収は5万円だった。当時、研修生制度は普通だったし、お金をもらい、自然学校運営のノウハウを教えてもらえるなんてラッキーだと感謝していた。

 だが時代は移り、働き方改革に耳目が集まる中、自然学校における研修生制度はあまり見かけなくなった。今思えば、研修生制度は労働基準法違反の可能性もあり、〝ブラック企業〟と言われるかもしれない。今年1月からは、社会保険労務士の方と契約し、働き方改革をしている最中だ。

 何泊かする宿泊型キャンプでシミュレーションをしてみたい。法定の時間外労働、早朝と深夜手当を付ける。そして連続するキャンプの合間に休日を与える。するとみるみる経費が積み上がり、新たな人手も必要になっていくではないか。

 かくして労働基準法に合致した雇用労働環境を整えるということは、その対価をどう捻出できるのかと表裏一体なのであった。

 そこまでは理解できても、実際にその対価の捻出、「お金の壁」を非営利の教育NPOがどう越えていくかは依然として難関のままだ。こうして頭を抱えていた矢先のコロナ禍である。

 早速、三重県のとある助成金を活用しようと電話をかけ「NPO法人」だと名乗ると「まず、NPOが対象かどうか確認します」と電話を切られた。NPOが雇用労働環境の整備に葛藤しながらも務めていることは知る由もないようだ。むろん、折り返し「NPOも対象だそうです」と返事はいただけたのだが。

 今、私たちの前には向こうの景色が想像もつかない「コロナの壁」がある。もし、幸運にもその壁を乗り越えられたとしても、今度は「NPOのお金の壁」と対峙(たいじ)することになる。

(NPO法人大杉谷自然学校 校長 大西 かおり)

 

(KyodoWeekly5月18日号から転載)

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