「冷静な頭脳と温かい心」

 世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスは、終息の兆しが見えず、人々の生活や企業活動に大きな打撃を与えている。感染者数の動向、各国政府の対応など、さまざまな情報が時々刻々と更新され、発信されている。人々はニュースや新聞などメディアという媒体を通じて得ることになるが、重要なのは入手した情報の真偽である。

 これまで経験したことのない未知のウイルスがまん延するこの状況下で間違った情報が流れることは、根拠のないデマの拡大につながり、商品の買い占めや人々の不安心理をかき立て混乱を招く、いわゆる「インフォデミック」を引き起こす。

 特に、現代はSNSを中心に急速に情報化社会が進んでいることから、以前と比べていち早く情報が不特定多数の人に拡散される時代になっている。もちろん、SNS自体は情報を把握する点においては非常に有効なツールだと筆者は感じているが、一つ取り扱いを間違えば、取り返しのつかない状況を招くことになる。

 例えば、記憶に新しいのは今年2月ごろに日本で起きたトイレットペーパーの買い占めに端を発するデマの拡散である。

 このデマの拡散にはさまざまな意見はあるが、「トイレットペーパーは中国で生産しているので、日本向けの輸出が減少する」などの誤った情報がSNSを中心に発信されたことから起きたとされている。

 普段の状態であればだれも気にも留めないうわさ程度で済む話が、不安定な社会状況下では非常に恐ろしい事態を招くことになると今回の騒動を通じて改めて筆者は感じた。

 こうしたデマの拡散による商品の買い占めは以前にも起きていた。それは、1973年に第4次中東戦争を契機としたオイルショックによるトイレットペーパーの買い占めである。この時も、戦争をきっかけに原油が入ってこないことから、石油製品が品薄になるといううわさから起きた騒動で知られているが、やはり今回の新型コロナウイルスと同様、人々の社会不安が増している状況下で起きたものである。

 もちろん、この時代にSNSは普及していないので、情報の伝わる速さや量は今と単純に比較できないものの、それでも構図としては昔と今、さほど違いはないのではないだろうか。

 日常、いろいろな情報が出回っている中で、何が正しく、何が間違いなのかを、瞬時に判断するのは非常に難しい。ましてや、不特定多数の人の意見が混じることでより一層、情報の真偽について臆測が臆測を呼ぶ状況を招くことも懸念される。

 こうした中、筆者としては経済学者のアルフレッド・マーシャルの言葉を思い出さずにはいられない。それは、「冷静な頭脳と温かい心(Cool Head but Warm Heart)」である。これは、経済学にとどまらず、社会のさまざまな問題に対する共通の姿勢であると考える。

 情報が錯綜(さくそう)しているこの状況下だからこそ、目先の情報だけをうのみにするのではなく、一人一人が温かさをもち、冷静に行動することが必要なのではないだろうか。

 流れてくる情報の背景に何が隠れているのかをよく考えて行動することが大事だと、今回のインフォデミック騒動を通じて筆者はそう考える。

(アジア太平洋研究所 野村 亮輔)

 

(KyodoWeekly5月4/11日号から転載)

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