「本の森」空飛ぶクルマのしくみ 技術×サービスのシステムデザインが導く移動革命

慶應義塾大学大学院 中野冠 監修

空飛ぶクルマ研究ラボ

 ●160ページ

●日刊工業新聞社(税別2000円)

 

「日本の基幹産業に」

 

 今年の元旦、日経新聞は大きな特集面で「空飛ぶクルマ離陸へ」の記事を掲載した。同日、朝日新聞も見開きのトヨタ自動車の広告で、空飛ぶクルマが飛んでいる合成写真が載った。

 空飛ぶクルマへの社会からの期待が高まってきている。

 空飛ぶクルマといえば、「電動垂直離着陸機(eVTOL)」、つまり電動で、ヘリコプターのように空と離着陸場を垂直に移動する機体をイメージする人が多いだろう。だが、実際は前述に加えて「空陸両用車」「都市型航空交通(都市の渋滞を緩和させるための交通手段)」「空を利用したDoor–to–Door移動サービス」の四つの定義がそれぞれ重なり合う形の試作機が海外で登場している。ドミナントデザイン(標準デザイン)は、まだ決まっていない。

 経営学では、ドミナントデザインが定まる前の数年間が業界へ参入するときのもっとも良いタイミングといわれる。その時点から遅れればチャンスを逃す。それは間違いなく、今の時期だろう。

 本書は、新しい移動手段の機体開発だけでなく、どんな用途がありうるか、それを実現させるために必要なインフラを含めて社会システムを構築していくときの考え方を説明している。

 空飛ぶクルマは飛行機よりカジュアルで低価格にもかかわらず、高速に移動できると考えられている。このため、本書で紹介したように多岐に渡る用途が検討される。特に、救命救急医療でのニーズがもっとも高い。

 現在、緊急時はドクターヘリが患者を高速搬送しているが、課題が多く、すでに持続可能な運営は厳しいと言われている。私たちは空飛ぶクルマがそれらの課題を緩和できると考える。

 地方都市間の交通でも役立つ。いま、地方都市の人は羽田空港を経由して他の都市へ飛んでいるが、時間と費用がかさむ。空飛ぶクルマによって移動が容易になれば、地方への産業誘致が促進され、地方創生にもつながるだろう。

 筆者は本書のコラムで、日本医科大学救急医学の松本尚教授をインタビューした。松本教授は「日本のものづくりは世界一です。そんな一流の技術者が開発する空飛ぶクルマは、日本の基幹産業にしなければならない」と話す。

 さらに、「すべてのステークホルダー(利害関係者)のみなさんに、そのための気概はありますか。その覚悟がなければ、他国に主導権を握られ、日本は今後、空飛ぶクルマを高額で輸入することになるでしょう」と松本教授は指摘する。

 日本の国内企業が一丸となって未来のモビリティーを描く。それが現実となる日は遠くないだろう。

(医療ジャーナリスト 福原 麻希)

 

(KyodoWeekly4月20日号から転載)

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