図書館閉鎖がもたらす負の作用 行き場を無くしたシニア層

 あらゆる市民生活に及ぶ新型コロナウイルス感染症拡大の影響だが、学校の休業だけではなく、図書館の長期閉鎖がもたらす負の作用も極めて大きい。その影響を考察してみた。

閉館のお知らせが張られた吉祥寺図書館(筆者撮影)

 個人的には、国会図書館ほか都内の大型図書館が軒並み閉鎖されたため、専門的な白書などの参照ができず、調査・考察に最も重要なファクトチェックの大きな制約となっていることに困窮している。

 やむを得ないこととはいえ、多くの研究者たちの研究が頓挫を余儀なくされていることも想像に難くない。感染拡大中の諸外国でも、多くの図書館が閉鎖中のため、学術面だけに着目しても、世界全体の損失が甚大な水準に達していることだろう。

 長期にわたる学校休業に伴い、勉強の遅れを懸念する心理も強く作用する。学習場所としての図書館を失った若年層に追い打ちをかける形で、2月28日に経済産業省が学習塾に対面授業の自粛を要請したため、図らずもオンライン教育元年となった向きもみられる。

 突然の状況に直面する中でも、動画配信に加えて電話で質問を受け付ける形態のほか、複数の生徒との間で双方向のやり取りを模索する動きが既にみられるなど、学習塾関係者の尽力には頭が下がる。

 本年度から必修化されるプログラミング教育によって、プログラミング的思考のみならず情報機器使用のリテラシー全体を底上げできれば、近未来の学習塾の姿自体が大きく変貌する可能性もあろう。

 

「無料で過ごせる場所」

 

 一方で、書店でも学習参考書や辞書が大きく売り上げを伸ばし、それにけん引されて書店全体の3月の売り上げも前年同月比で数%伸びたことが業界紙で報じられた。

 巣ごもりを余儀なくされる中で、「図書館で借りられないなら買うしかない」と書籍を買い求めたことが、活字離れを小休止させた一面も認められよう。

 こうした混乱の中でも、SNSのコメントや通販サイトのレビューの影響力は大きく、それが実店舗の購買行動までを左右するようで、評判の良い学習参考書などが次々と売り切れている模様だ。

 実際に、学校休業からわずか数日しかたっていない時点で、参考書の購入のため子連れで書店を訪れた主婦が、店員から品切れ中で次の入荷時期は不明と聞いてがっかりする様子にも遭遇した。

 筆者の親族用に数年前に購入し、長期間にわたってフリマアプリ上に出品していた算数・国語のドリルも、ある日を境に閲覧数が急伸し、ほどなく売却できた。

出典:公益社団法人日本図書館協会「日本の図書館統計」より筆者作成

 日本図書館協会によれば、2009年から19年までの国内図書館への来館者数がほぼ一貫して伸びた一方で、個人向け貸出総数は減少傾向にある。この結果、1人当りの貸出点数も、09年の約2・50点から19年には約1・97点へと減少した。

 背景には、高齢化の進行に伴う「無料で過ごせる場所」としてのシニア層の利用増があろう。

 コロナ渦以前に市中図書館を訪ねた際にも、多くのシニア層が長時間滞在して新聞や雑誌などを閲覧する一方で、貸出窓口に並ぶ比率は低い様子がうかがえた。

 図書館閉館によって行き場を無くしたシニア層の中には、ドラッグストアのマスク行列に加わる向きも認められよう。

 心身ともにアクティブな一方で、ウイルス感染時に重篤化しやすいシニア層に〝3密〟を避けてもらうには、在宅の動機を与えることが有効となる。

 スマートフォンやタブレットの利用率は、シニア層の間でも上昇しているため、ビデオ通話アプリを通じたオンライン上での親族、知人らとのビデオ通話が一案となろう。保守的な思考・行動を変えるためには、最低限の操作技術とリスク回避策をより平易に伝えられるよう、地域の福祉施設などでの講座内容をいま一度見直されることも考えられよう。

【筆者】

信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役

佐々木 城夛(ささき・じょうた)

 

(KyodoWeekly4月20日号から転載)

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