「落語の森」食べ物あれこれ(ア行)

 イスクリームが出てくる珍しい噺(はなし)といえば先代(八代目)桂文楽師の「かんしゃく」、ただただかんしゃくを起こす旦那の噺で師と柳家小三治師でしか聴いたことがない。酒はさまざまな噺に登場するがポピュラーなところでは「替(かわ)り目(め)」。酔っ払いの亭主に困惑する女房の噺で寄席のスタンダード、演(や)り手も多い。本来のサゲ「お銚子の替り目」まで演ることは少ない。やはり文楽師に「夢の酒」という何とも粋な品のいい噺がある。「冷やにしとけば良かった」のサゲ、飲み手なら大いに共感できる。「親子酒」は、大好きな噺。

 「替り目」の女房が買いに行かされるのがでん。柳家小ゑん師自作の「ぐつぐつ」では主役として登場、「ぐつッ、ぐつッ」という音がクッションになって噺が展開していく。

 唐茄子の倍川(べかわ)餅は「唐茄子屋政談」に出てくる。三遊亭圓生師と古今亭志ん朝師の名演が浮かぶ、これぞ「江戸っ子」という、噺家さんなら誰もが演ってみたい気持ちのいい噺。「政談」とはいうもののお白洲のシーンはない。納豆はこれも文楽師の「明鳥」、可愛い花魁(おいらん)と一夜を共にした堅物の若旦那ともてなかった源兵衛と太助の噺。艶っぽいこの噺を高校の落研時代に1年生で演った強者(つわもの)がいたがよく先生も黙って見ていたものだ! 志ん朝師の若旦那や意外に立川談志師も良かった。

 うどんは、先代(五代目)柳家小さん師とやはり先代(十代目)金原亭馬生師の「うどん屋」にトドメを刺す、冬の情景が浮かんだものだ。鱇(んこう)は先代(三代目)三遊亭金馬師の「居酒屋」に登場、今なら古今亭志ん橋師が楽しい。この噺へのオマージュとして桂文枝師が作ったのが「ぼやき酒屋」、筆者は師に「演らせてください!」とお願いして演じさせてもらっている。猪鍋は「二番煎じ」で火の用心で町内を歩く旦那衆が寒さしのぎに用意、これを見回りの役人に食べられ…という噺。志ん朝師が良かったが、今だと落語芸術協会の立川談幸師が楽しげに演じ、同会会長春風亭昇太師も演っている。

 んころ餅に金をくるんで食べ、死んでしまうのが「黄金餅」の坊さん・西念。焼き場で西念の腹を掻(か)っ捌(さば)いてこの金を…というものすごい噺。古今亭志ん生師と談志師が名作に仕立てた! 「この金を元手に、目黒で餅屋をやってたいそう繁盛をしたという、黄金餅の由来の一席でございます」と締めるのもスゴイ! これこそ落語!

 「甲府ぃ」「鹿政談」などに登場するのがから。「甲府ぃ」では、甲府から江戸に出てきた伝吉が盗み食いをし、「鹿政談」では奈良の鹿が盗み食いをする場面から噺が始まる。「徂徠豆腐(そらいどうふ)」での立川志の輔師の豆腐の食べっぷりの見事さ! 見ていて食べたくなった。「代書屋」に出てくるのが川焼。先代(四代目)桂米團治師が作った噺でその弟子の米朝師から一番弟子の枝雀師、先代(三代目)桂春団治師や談志師らに受け継がれ、柳家権太楼師や古今亭志ん陽師ら東京でも演り手がいる。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly4月13日号から転載)

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