住民と支える地域の移動手段 福島県伊達市の支え合い交通

 少子高齢化社会の進行に伴い、地域の移動手段確保が社会的な問題となっている。その一方で、近年、自動運転や配車システムなどといった移動に関する技術革新が起きている。新たな技術を活用しながら住民と連携した「支え合い交通」の実証実験に取り組む福島県伊達市の動きに注目する。

街中を走る自家用車(筆者撮影)

増える交通弱者

 

 自動車への依存度が高い社会構造となっている日本。公共交通機関が少ない地方都市や中山間地域を中心に、移動を制約されるいわゆる「交通弱者」が生じることにより、高齢者による交通事故や買い物弱者の増加などにつながることが社会的な問題となっている。地域の公共交通機関は、利用者の減少や運転手などの人材不足により、運行範囲が縮小傾向にある。

 一方で、近年、自動運転や配車システムなどといった移動に関する「技術革新」が起きている。国内に多く存在する交通空白地では、配車アプリなどを活用しながら住民がドライバーとなって自家用車で送迎する「支え合い交通」がスタートしている地域もある。

 福島県中通り北部に位置する福島県伊達市では、日々の移動手段に困っている独り暮らしの高齢者が増加していたことから、地域の一つの課題となっていた。そこで、2018年2月から、新たな移動手段の仕組みづくりに向け、地域のタクシー事業者の協力を得ながら、主に高齢者の地域住民らと「支え合い交通」の実証実験に踏み切った。

 

気を遣う?

 

 自家用車による送迎を行うにあたっては、有償の場合には、現法制度である「自家用有償旅客運送制度」にのっとって、市町村やNPO団体などが運行主体となる。また、運転手には、第2種免許所有者、または国土交通大臣が認定した講習実施機関での講習を受講している第1種免許所有者であることが求められる。

 実証実験では、無償の運送として、地域住民がボランティアの運転手モニターおよび利用者モニターとして参加した。

 まず利用者モニターは、配車システムのサービスに登録し、電話もしくはインターネットで希望の利用日時や行き先などを指定する。そうすると、配車システムに登録されている運転手モニターとマッチングされ、運転手モニターは自家用車で利用者モニターの指定場所へと向かう。

 予約手段としては「電話の利用」が多く見られたが、例えば、高齢者がインターネットを使って予約する場合は、担当運転手がサポートしながら徐々に慣れてもらうなど、普及するための支援が必要になることも見えてきた。

 実際に、市内のスーパーなどへ出かけた利用者モニターからは、「電話やインターネットで簡単に予約ができる」「目的地まで直接行けて便利だ」「自分で車を運転できなくなったときの必要性は非常に高い」との声があがった。

 その一方、「どのような運転手が担当になるのか、少し不安を感じる」などといった、公共交通を利用する際には感じない、自家用車ならではの不安な見方もあった。

 また、「料金を支払わないのは申し訳ない。なんだか気を遣ってしまう」ことから、有料化にした方がサービスとして気兼ねなく利用できる印象を受けた。

 運転する側の声はどうだろうか。協力した運転手モニターへ尋ねてみると、「万が一事故を起こした場合、自身が加入する保険への影響などはないだろうか」といった不安の声を聞いた。

 このような背景から、支え合い交通を運行するにあたっては、自家用車を利用した住民による送迎の気軽さや柔軟性の利点を生かしながらも、サービスとして誰もが安心して継続的に利用でき、運転手を担うことができるといった、誰もがわかりやすい「仕組みづくり」が不可欠である。

 

「三方よし」

 

 こういった動きに対し、政府や民間企業の動きもみられる。昨年6月21日に閣議決定された「成長戦略実行計画」では、交通事業者が実施主体に参画する「自家用有償旅客運送制度」の創設に取り組むことが明記されている。

 また、民間企業によって、高齢者の移動を支援するボランティアドライバーを対象とした保険サービスが発表された。

 運行主体に参画する交通事業者にとっては、運行管理を行いながらも、利用者から利用料を受け取り、運転手に対しては、運行協力に対する対価や保険を適応するといった仕組みづくりも検討できる可能性がある。

 そうすることにより、運転手側の不安を解消したうえで、利用者も運転手も安心できる「移動手段」となり、現状では収益性や運転手の確保が難しいことから不可能だったエリアでの柔軟な運行の可能性も見えてくる。

 今後ますます、地方都市や中山間地域を中心とした移動手段の確保が重要となる。中でも、新しい技術を有効活用できる仕組みを整えていく必要があり、支え合い交通を既存の交通サービスの補完するサービスと見なすことができれば、地域交通のサービスレベルの維持や向上に寄与できるのではないだろうか。

 地域の関係者が連携しながら、利用者、運転手、運行主体の「三方よし」となる仕組みづくりが期待される。

[筆者略歴]

富士通総研 コンサルティング本郡 行政経営グループ シニアコンサルタント

竹内 幹太郎(たけうち・かんたろう)

1985年岡山県生まれ。岡山大大学院博士後期課程修了。専門は地域振興・活性化に関わる計画策定・各種調査など。博士(環境学)

 

(KyodoWeekly4月13日号から転載)

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