「音楽の森」鮮烈な「春の祭典」の登場

 このところ久石譲の“クラシック指揮者”としての活動が際立っている。久石といえば“ジブリアニメ”をはじめとする映画音楽はもとより、クラシック系を含めた多様な音楽を手がける“作曲家”として名高い存在だ。だが2016年から18年にフューチャー・オーケストラ・クラシックス(旧ナガノ・チェンバー・オーケストラ)を指揮して行ったベートーベンの交響曲全曲演奏は、ライブCDも出されて高い評価を獲得し、全集アルバムは2019年度レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞。今年2月にはブラームスの交響曲シリーズもスタートし、新たな注目を集めている。

 以前当欄でも「第1番&第3番」を取り上げたベートーベンのシリーズは、“ロックのような”をうたった、推進力とビート感抜群の凄演(せいえん)だったが、今回ご紹介するのは、“ロックにも影響を与えた”ストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。こちらは既存のオーケストラ、東京交響楽団を指揮した2019年6月のライブ録音である。

 「春の祭典」は、1913年パリで初演された際に、怒号や罵声が飛び交う大混乱を巻き起こした(当時の)衝撃作。しかしその後は20世紀を象徴する“スタンダード作品”となり、無数の解釈やあまたの名盤が生み出されている。したがって新たな録音でインパクトを与えるにはハードルが高い作品でもある。

 結論から言えば、本作もあらゆるフレーズが生命力を放ちながら躍動する快演だ。まずは既成概念にとらわれずに構築された音のバランスが実に新鮮。ベートーベン同様にリズムの明確さも耳を奪い、中でも遅い場面における鮮明なリズムが、これまでにない感触をもたらしている。

 第1部の冒頭からさまざまなフレーズが生き生きした表情で奏される。テンポを速める「春のきざし」の場面からはキビキビと進み、リズム自体が音楽を語っている。以後も速い部分のスピード感は比類ない。だがここで注目すべきは、歯切れ良いリズムの上で奏でられるレガートなフレーズが、きわめてしなやかである点。そこが単なる快速演奏とは一線を画している。ともあれ最後の前進性や迫真の畳み込みは理屈抜きにすさまじい。

 第2部前半の静かな部分は、やはりバックのリズムの明晰(めいせき)さが光る。有名な11連打から「選ばれしいけにえの賛美」に入った後は、激烈かつソリッドな動きで突き進み、一気呵成(かせい)に終結する。 

 作曲家ならではの緻密な解析が反映された表現ともいえるが、それに応えて細部までこまやかに神経を行き渡らせた東京交響楽団の演奏もまた見事。音楽的感興と生理的快感を併せ持つ鮮烈な「春の祭典」の登場と言っていい。

(音楽評論家 柴田 克彦)

 

(KyodoWeekly4月6日号から転載)

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