納得性ある感染症対策を

 細菌やウイルスによる感染症に対して、人類は長年苦闘してきた。近年、人や物が世界規模で動くグローバル化の進展により、世界的な感染流行が繰り返されている。

 新型コロナウイルスの感染が世界に拡大し、世界保健機関(WHO)はパンデミックとしている。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)をはるかに超える感染者数、死亡者数となっている。供給と需要の両面から、世界経済に大きなマイナス影響が生じている。影響の長期化も懸念される。

 新型コロナウイルス感染が収束しても、今後も再流行や新たな感染症の発生がありうるから、警戒は怠れない。重大な脅威となる感染症対応は、自然災害対応などと同じく、国家の危機管理事項であり、国が強いリーダーシップを発揮して感染拡大防止と社会経済活動維持を図る必要がある。

 感染症対策の国の中枢機関として、有識者から米疾病対策センター(CDC)のような強力な専門組織が日本にも必要だとの意見がある。

 日本には国立感染症研究所があり、感染症の疫学情報収集・解析、病原体の特性分析などにあたる専門組織となっている。

 しかし、予算や人員ではCDCとは雲泥の差がある。平時から世界の感染症発生動向を監視し、速やかに情報を入手し、科学的なリスク評価も行い、国民や企業に的確な情報提供と注意喚起を行えるようにすべきである。

 健康危機の発生時には、現場に速やかに展開し、情報収集と解析を行える体制が不可欠である。疫学や公衆衛生の専門家が日本には不足している。地方の衛生研究所や保健所も含め、感染症の危機管理に対応できる人材育成は国全体として急務だ。

 ウイルスは目に見えないし、その特性もよくわからないことが多い。それゆえに、新型コロナウイルスでも国民の不安が大きくなり、疑心暗鬼も生んだ。メディアから危機をあおりかねない報道も一部にあった。

 また、SNSを通じて真偽が定かでない情報が流布され、パニック行動を引き起こした。不確かな情報に惑わされないという国民の情報リテラシーの向上が必要であるが、そのためにも、国の中枢機関の専門家が信頼できる科学的な知見と評価を国民に迅速かつ的確に情報提供することが必要である。

 その上で、防疫のために社会経済活動をどこまで制限するかは、影響を多角的に踏まえて、政治責任での意思決定となる。感染者の爆発的急増による医療崩壊は回避すべきなので、ときに強い制限を伴う対応が必要なこともある。重要なことは、政策対応の理由が、科学的根拠の裏付けもあり、国民の理解と納得が得られることである。

 新型コロナウイルス感染拡大が一定収束したら、政府において、広く専門家から意見をヒアリングしつつ、国民も認識できる透明性あるプロセスの中で、これまでの対応を検証し、課題や反省点を把握する必要がある。それを踏まえ、必要な予算・人員に裏付けられた感染症対策の中枢機関の在り方、科学的知見の情報提供と政策対応の意思決定の仕組みについて、議論していくべきである。

(アジア太平洋研究所 主席研究員 藤原 幸則)

 

(KyodoWeekly4月6日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ