「風のたより~地域経済」ポスト・ベッドタウン

UR多摩平の森の風景=2008年5月27日、井上ひろし氏撮影

 東京の郊外、日野市のUR多摩平の森はJR中央線豊田駅から数分のところにある団地だ。スーパーや図書館、医療・介護施設を擁する利便性に加え、雑木林のたたずまいを残すこの地区は、散歩していて実に心地がよい。天気が良い日には散歩しながら富士山が拝めるよう、道路の向きまで工夫されている。

 前身の多摩平団地は、旧日本住宅公団(現在の都市再生機構=UR=)による初の郊外型住宅団地で、1958年から2792戸が供給された。この一画にはかつての宮内庁御料林(のちの農林試験場)があったが、当時の計画・設計に携わった津端修一氏は、そのたたずまいを残し、魅力ある街を創出すべく、樹木の保全を含め、景観にも配慮して整備を進めたという。

 竣工から約40年がたった1997年からの団地建て替えでは、これからの多摩平の森地区のあり方について団地自治会、日野市、公団(UR)の三者がフラットな立場で議論を重ねた。

 三者連携の成果は今日のまちづくりにつながっているという。2004年に公団が独立行政法人(UR)となり、その後、賃貸住宅建て替え計画は変更され、計画地の約3分の2が民間事業者などへの譲渡または賃貸とされた。だが、無秩序な開発が進まないよう、用地売却には市の同意を必要とする旨の協定が結ばれ、規制や地区計画には住民の意見が反映されている。

 この見事な武蔵野の杜(もり)を擁する団地は、さらにいま、ポスト・ベッドタウンともいえる新たな郊外型まちづくりに向かっている。その特徴を三つ挙げてみる。

 第1に、職住近接型のまちづくりである。日野市は水資源が豊富であり、日野自動車や東芝などさまざまな製造業が立地してきた。こうした技術を有する企業と、そこで働く人々が地域のなかで連携交流する機会の創出が模索されている。新たなビジネスを創出するための連携交流拠点「PlanT」が整備され、起業や製品開発、販路開拓など、イノベーションを創出する出会いと交流の場所が形成されている。こぢんまりしているが、居心地が良い場所である。

 第2に多世代交流型のまちづくりである。超高齢社会の到来を前に、医療・介護施設の整備と併せて、多世代の連携交流が生まれやすいよう、交流拠点となる食堂やカフェ、保育所、広場などが整備されており、団地自治会や指定管理事業者が関わり、数々の地区イベントが開催されている。

 第3に環境共生型のまちづくりである。中高層住宅地区では緑化率が25%と高い水準で設定されるとともに、緑の保全を図ることで、高品質な空間を整え、緑の連続性を維持している。樹木の保全と伐採についても住民を含め三者勉強会で協議を重ね、判断してきたという。

 単に住むための団地ではなく、そこで暮らし、働き、交流することを通じて、創造性が発揮される都市空間の創出が進められている。住みたくなるまちづくりの一端を見た思いがした。

(東洋大学教授 沼尾 波子)

 

(KyodoWeekly3月16日号から転載)

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