「風のたより~地域経済」アイドルは職人さん

 2年前まで私が勤務していた新潟・燕三条には、地域ニュース限定の日刊紙「三條新聞」がある。昨年秋、1面トップで、職人さんのカードができたと報じられた。小学生が交換して遊ぶカードのような仕様で、表は、真剣な表情で作業をしている職人の写真、裏には経歴とその技術のどこがすごいのか解説されている。子どもたちが集めたり交換したり、技のすごさを競ったりするかも?!

 新潟のアイドルというと結成17年の女性3人組Negicco(ネギッコ)が有名だが、燕三条では、職人さんたちもこれに負けない人気を博している。職人さんが脚光を浴びたのは燕三条工場の祭典だ。毎年10月初旬の4日間、約100の工場などが門戸を開き、工場見学、体験などが楽しめるイベントだ。祭典のパンフレットには以前からプロの写真家による職人のショットが盛り込まれていた。

 このパンフレット、これまではほぼ無料だったが、昨年から2千円で販売、職人さんの写真も大幅に増えて、まるで職人さんのアイドル写真集だ。これまでも、燕三条駅の地場産品セレクトショップには職人さんを大写しにしたタペストリーがずらりと掲げてあった。JRも職人さんの写真を使った工場の祭典ラッピング列車を走らせた。

 プラス、今回のカードだ。職人といえば寡黙なイメージだったが、工場の祭典により、これも大きく変わった。ものづくりの情熱を熱く語り、流ちょうに解説しながら、真っ赤な鉄を鍛える。見学の女性に取り囲まれポーズをとる姿も様になってきた。人気と実力を兼ね備えた立派なタレントさんだ。燕三条の最大の財産である職人さん。その価値を高めることで、商品の価値も、地域の価値も高まっている。

 さて、今私が勤務している、長崎・佐世保近郊で職人さんの街というと、陶磁器の産地、波佐見町だ。

 先日、ある「生地や」さんを訪問した。生地といっても布ではなく、土だ。波佐見焼は分業制で、「型やさん」「生地やさん」「窯元」などに分かれている。金型、プレス、研磨などに分業している燕三条に似ている。訪れた「生地や」の社長さんは、ヨーロッパから受注した極薄食器の図面を見て、どう生地を作るか考え込んでいた。焼きによる収縮を考慮し、机上のデザインの欠陥も補う必要がある。

 これまでも、器を薄く軽くしつつシャープな角や優雅な曲線を出すために、原料の配合や機械の改良など数々の工夫を積み重ねてきた。そんな苦労話を自慢げに語る社長の表情は、絵になる。70歳の新人アイドル。833potters(ハサミポッターズ)のセンター候補だと思った。波佐見町は今、クラフトツーリズムによる交流人口拡大に取り組んでいるが、職人アイドルの発掘と育成が鍵を握っている。

(西海みずき信用組合理事長 陣内 純英)

 

(KyodoWeekly2月17日号から転載)

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