「落語の森」春の噺

 まずはにぎやかに「愛宕山(あたごやま)」、先代(八代目)桂文楽師の熱演が目に浮かぶ。傘を差して山から飛び降り、小判を拾おうとする幇間(たいこもち)・一八(いっぱち)の必死さが笑えるし、涙ぐましい。動きがあって楽しめ、何より意表を突いたサゲがいい。師亡きあとは、古今亭志ん朝師がダイナミックに華やかに演じていた。余談だが、この志ん朝師が若き日に「ソロバン節」という歌を吹き込んだことを最近知ったがこれがいい! キレのあるノドを聴かせてくれる。

 「愛宕山(あたごやま)」は、上方では桂米朝・枝雀の師弟がにぎやかに演じた。もう何年も前に「志い朝の会」という落語会があった。明治大落語研究会で四・五・六代目の紫紺亭志い朝を名乗った三宅裕司・立川志の輔・渡辺正行の3君がOBになってから何回か演(や)った。

 何回目だったか、渡辺クンがこの大物「愛宕山」に挑戦し、奮闘した。三宅クンは学生時代に私が教えた「時そば」だった。彼が1年生の時に教え、演らせてみたら私より上手かった「時そば」! この会でも軽やかに演じ観客の喝采を浴びていた。

 「桜鯛」は三遊亭圓生師が最後の高座で演った噺(はなし)。1979(昭和54)年9月3日、キチンとしたホールでなく、千葉県習志野市の結婚式場が会場だった。「目黒のさんま」など殿様の登場する噺のマクラによく使われる小噺程度の噺、これが名人圓生師最後の高座だった。

 「たけのこ」は柳家喜多八師、モットーは「清く、気(け)だるく、美しく」で、やる気なさげなマクラから徐々に大熱演になる高座! 2016(平成28)年逝去、享年66。

 「やかんなめ」も喜多八師。師匠柳家小三治師が掘り起こしたこの噺をよく演っていた。花見帰りの大家の奥さまの「癪(しゃく)を抑えるため、やかん頭をなめさせて」に困惑しながらも、応えてやる武士の表情が見ものだった。今は春風亭三朝師で聴ける。

 「花ねじ」は先代(二代目)桂小南師が演った、東京の寄席で上方落語を広めた功労者。米朝師の著作「落語と私」と共に小南師の著作「落語案内」を県立高校で「心豊かな高校教育」という授業をする際に筆者も参考にさせてもらった、何れも名著だと思う。

 花見の噺なら、これ! 「花見酒」がある。花見客でにぎわう向島が舞台。先代(十代目)金原亭馬生師の高座が懐かしい! やはり先代(八代目)の林家正藏師も演っていた。この噺を下敷きにした「花見酒の経済」という本がベストセラーになったことがある。1962(昭和37)年のこと、著者は笠信太郎氏。

 与太郎が活躍するのが文楽師の十八番(おはこ)だった「厄払(やくはら)い」、文楽師が演ると与太郎が粋に見えるから不思議! 師亡きあとは、小三治師くらいか。ぶらぶらしてる与太郎におじさんが節分の厄払いをさせる噺。「煎(い)った豆が豆腐になるか!」と言われ「焼き豆腐にならァ」と答える与太さんの表情、たまらない。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly2月17日号から転載)

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