現場はい回る記者たちの息吹 「イージス・アショアを追う」

 2019年度の新聞協会賞(編集部門)は、秋田魁新報社による北朝鮮のミサイルに対抗する迎撃システム「イージス・アショア」配備を巡るスクープと一連の報道に贈られた。このほど、2年にわたる取材の舞台裏を記録した「イージス・アショアを追う」を出版。取材班代表の松川敦志さんに紹介してもらった。(編集部)

秋田魁新報取材班 (著)、 秋田魁新報社(編集)、300ページ、1600円(税別)

共通する疑問

 

 政府の打ち出した重要政策が地域住民にとって容易に首肯できるものではなかったとき、地元メディアはどう対処すればいいのか。まして、それが「国の専管事項」といわれることすらある安全保障政策だったときには―。

 本書が描くのは、秋田県の地元紙・秋田魁新報で働くわれわれが、このような事態に戸惑い、もがき、あるべきジャーナリズム像を追い求めた2年間の軌跡である。

 2017年晩秋、弾道ミサイル防衛のための新たな防衛装備「イージス・アショア」を秋田市に配備しようとする政府の計画が、全国紙の報道で明らかになる。安全保障問題に縁遠かった秋田魁新報の記者たちにとってそれは、難しい取材テーマだった。

 しかし、当初から記者の間には共通する疑問があった。住宅地にこんなに近い場所に、固定的なミサイル基地を築いてしまっていいのかという素朴な問いだ。

 計画の詳細が明らかになるにつれ、政府が配備先を選んだ根拠の薄弱さが目につくようになり、住民の間に反発が広がっていった。取材の軸足はいつしか、そうした地域住民の目線に立って「なぜこの場所が選ばれたのか」「配備地として妥当なのか」「配備の真の目的は何なのか」といった問いを重ねるものになっていった。

 本書をまとめるにあたり、局面ごとの記者たちの行動にそれぞれの思いを重ね、報道の経緯を具体的に記すことを心がけた。高まる一方のメディアバッシングや、急激な社会のデジタル化にさらされながら、それでも新聞の存在意義を信じて目の前の取材対象に立ち向かう記者群像だ。

 

学生からの問い掛け

 

 配備問題の報道を続ける中で、われわれは防衛省調査のずさんさをスクープし、2019年度の新聞協会賞を受賞した。地域住民の目線にひたすら立った報道の積み重ねで官の劣化を暴き出したこの特報についても、取材の詳細をありのままに記している。

 後書きの中では、ある地元大学生から投げかけられた問い掛けを紹介し、学生への次のような返答を記した。

 「地域住民の声にちゃんと耳を傾ける社会であってほしいし、そういう社会でなければならないというのが、新聞記者としてのわたしの考えです」

 地域住民の間に分け入って現場をはい回る地方記者の息吹を行間に読み取っていただけるようであれば、この上ない幸いである。

[筆者]

秋田魁新報 社会地域報道部編集委員

松川 敦志(まつかわ・あつし)

 

(KyodoWeekly2月3日号から転載)

新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ