
朝飯会200回記念イベントの様子=2019年12月(筆者撮影)
長崎県佐世保市の隣町に陶磁器の産地波佐見(はさみ)町がある。
波佐見焼といえば、かつては白地に呉須(ごす)の青と相場が決まっていたが、今や機能的なデザインやカラフルな色使いで人気を博している。陶器市ではあちこちから「これ、かわいい!」と声が上がる。東京ドームのテーブルウエア展示会(昨年2月)でも、センターの位置を占めた。
それでも単なるモノづくりでは限界があると、波佐見は今、町を挙げて交流人口の拡大に注力している。製陶所の跡に、レストラン、カフェ、セレクトショップ、ボルダリング施設が立ち並ぶ「西の原」は人気のスポットだ。
また、ショップを併設する窯元が増え、炭酸水の美肌温泉、ミシュランに掲載されたピザ屋などもあって、訪れる人は順調に増加。交流人口は、2017年度に100万人を達成し、今は150万人を目指す。かくて波佐見は九州屈指の「元気がいい町」として注目を集めている。
その波佐見で16年以上続いている「朝飯会(ちょうはんかい)」という会合がある。毎月第1土曜日の朝6時から開催。昨年12月に200回目を迎えた。主宰するのは、波佐見焼振興会の児玉盛介会長。当初は一瀬政太町長のための政策勉強会だったとのことだが、それにしてはゆるい会合だ。
皆、普段着。スーツ・ネクタイ姿はまずいない。参加者は地元企業の社長さんや奥さん、観光や地域おこしに携わる人、地元高校や大学の先生、学生さん、新聞記者や放送局の人(取材ではない)など。女性や若者も多い。
地元の食材で作った弁当を食べ、あとは司会の副町長に指名された順に話をするだけ。一言で終わる人がいるかと思うと、10分も話す先生もいる。テーマも自由で、家庭や職場でのできごと、最近見た映画や旅行の感想、イベントの様子など各人のばらばらだ。前のスピーカーの話題を膨らませる人もいる。質疑応答などはなく、ただ話を聞いて笑ったり、拍手をしたりするだけ。最近は参加者が増え、終了が10時を過ぎることもあるが、不思議に誰も居眠りしない。
何が面白いのか説明し難いが、カジュアルで、カラフルで、多様性に富み、なんとなく長く使ってしまう波佐見焼と同じ魅力が、この会合にもあるのかなと感じる。ここで参加者が得たインスピレーションや人のつながりが、元気な町、波佐見の原動力の一つになってきたことは間違いないだろう。
今年2月14日「第1回クラフト・ツーリズム産業協議会」全国大会が波佐見で開かれる。多くの人にモノづくりの産地を訪れて、その土地の歴史や文化、職人・デザイナーの技術や情熱を体感してほしい。そんな思いで、朝飯会の常連も多く参画している。ぜひご参加を!
(西海みずき信用組合理事長 陣内 純英)
(KyodoWeekly1月13日号から転載)