「口福の源~食料」ジビエで地域活性化

 ジビエのシーズンがやって来た。ジビエは、狩猟で得られる野生鳥獣類を意味するフランス語。家畜にはない自然な味わい、力強い香りがある。最近は1年中食べられるようになったが、体に脂肪を蓄えていちばんおいしくなる旬は、狩猟が解禁される秋から冬だ。日本で狩猟できる鳥獣は48種あるが、代表的なのがシカとイノシシである。

 王侯貴族の時代から現代まで、フランスでジビエは最高級食材として珍重されてきた。日本でもフランス料理の好きなグルメの間で知られていたが、一般に広く認知されたのは、野生鳥獣による農林被害が深刻化する2000年代以降だった。

 人口減少が進む日本だが、皮肉なことに、野生動物の数は増加している。なかでもシカとイノシシの増え方は爆発的だ。農産物を食い荒らす被害額が200億円を超える年が続き、各地で駆除対策が積極的にとられるようになった。

 捕獲した鳥獣の大半は、土に埋めるか焼却で廃棄されている。そこで、せっかく奪った命を無駄にせず、食肉として有効活用しようと、和洋中の各料理店が取り入れるようになった。こうした動きのなか、ジャンルを問わずジビエという呼び名が定着し、最新版の「広辞苑第七版」に収録されるまでになった。

 ジビエで地域活性化に取り組む自治体が全国に広がり、ご当地ジビエ料理のレシピ開発も盛んに行われている。肉食禁止だった江戸時代、シカは「紅葉(もみじ)」、イノシシは「牡丹(ぼたん)」「山鯨(やまくじら)」と呼びかえて、こっそり鍋料理でたしなまれていたくらいで、和食との相性も非常によい。

 ジビエを食べるときに、もっとも注意したいのが安全性である。ぐるなび総研が「今年の一皿」に、ジビエ料理を選んだ14年、人気の高まりを受け、厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を策定した。加熱が不十分なイノシシ肉、シカ肉には、E型肝炎ウイルス、寄生虫の感染、腸管出血性大腸菌による食中毒のリスクがある。にもかかわらず、猟師が自己流で解体した肉を使ったり、刺身や半生で出したりする店が跡を絶たなかった。

 指針では、許可施設で解体された肉を用いることと、中心部の温度が75度で1分間以上、または同等の効力がある方法で加熱し、絶対に生食はやめることを呼びかけている。18年5月には農林水産省による「国産ジビエ認証制度」の運用がスタートし、指針を守って適切に処理されたシカとイノシシの肉は、認証ラベルを貼れるようになった。

 いまや通販で生肉やソーセージなどの加工食品が手軽に取り寄せられるようになり、この11月29日からは、認証基準を満たした肉を使った「ジビエ鹿肉バーガー」が、ロッテリア全国123店舗で発売中だ。急速に衛生管理が進展した今日、ジビエは牛や豚と同様、安心して賞味できる食肉になりつつある。

(食文化研究家 畑中 三応子)

 

(KyodoWeekly12月23日号から転載)

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