「陸海空の現場~農林水産」「攻めの農政」のごまかし

 政府の農林水産物・食品輸出促進法が11月20日、成立。来年度から関係省庁連携の政府一体での輸出戦略が動きだす。

 農産品輸出といえば、年内の1兆円達成が目標だったが、菅義偉官房長官は「なかなか難しい」と早くも白旗宣言。食料自給率が史上最低なのに「輸出は日本農業成長の鍵」(農林水産省)との政府方針に対し、農業の現場からは「農政の方向性が間違っている」と手厳しい声が聞かれる。

 「人口という漢字は人の口と書くが、人の口が減るのは食べていただくものを生産している産業にとっては一大事」と言うのが、経済産業省0Bで輸出戦略旗振り役の1人、斎藤健・元農相。日本農業は人口減少で「国内需要のみに着目するのではなく、世界の80億人を相手にする」(塩川白良(しおかわ・しらら)・農水省食料産業局長)というもので一見格好いい。

 確かに農産物や食品の輸出は、和食がユネスコの無形文化遺産になり、国産農産物のブランド力など世界的に注目度が増しているのは事実。安倍晋三首相は、第1次政権時から農産品輸出額の1兆円目標を提起し、2013年に5505億円だったのが昨年は9068億円と目標に迫った。30年には5兆円の目標を掲げる。

 そのための戦略が、データ収集や調査など関係省庁一体で支援する司令塔組織の設置や、戦略的マーケティング活動の強化などを柱にした輸出促進法による強化策だ。来年度予算は本年度当初比4倍の248億円の概算要求だ。

 ただ、これを現場が評価しているかといえば別だ。「攻めの農政」と首相が本部長となって輸出攻勢を呼び掛けても「環太平洋連携協定(TPP)などへの反発をかわそうという目くらましにしか見えない」(JA組合長)、「アドバルーンをあげすぎだ」(同)との批判が出ている。

 実際、18年の農林水産物輸出入概況によると、輸出の中身は国産農産品をほとんど使わない清涼飲料水や菓子類、インスタント食品などが目立つ。

 農業専門紙の調査によると、農産品分類の最大の品目は「その他の調製食品のその他」の798億円。具体的にどんな中身なのか財務省関税局や農水省、大手商社などに聞いても誰も答えられなかった。

 農民団体によると、18年の農産物輸出は、牛肉、リンゴ、コメ、緑茶、野菜、花など純然たる国産農産物は1188億円で農業総産出額9兆3千億円の1・2%、輸出総額の割合でも13%にしかすぎない。団体の幹部は「輸出が日本農業を救うというのは大うそ。たった1%少しの寄与で攻めの農業とはインチキだ」と批判。「まずは自給率など国内農業の現実に目を向けるのが先。そうしないと輸出戦略は早晩あだ花になる」と警告している。

農政ジャーナリスト 小視曽 四郎(おみそ・しろう)

 

(KyodoWeekly12月16日号から転載)

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