「風のたより~地域経済」二つの図書館

 佐賀県には、つい足を運びたくなる二つの公共図書館がある。一つは武雄(たけお)市図書館。武雄市では、2013年にTSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に公立図書館の運営を託した。民間の書店を指定管理者とした公設民営の手法に注目が集まり、武雄市図書館は一躍有名になった。

 人口5万人規模の都市にあるこの図書館に、コーヒーチェーン、スターバックスも出店し、洗練されたデザインの図書館が整備されたことで、市内外から多くの来訪者が訪れている。通常の貸出業務のほか、ツタヤによる新刊雑誌や書籍、地元特産品などの販売も行われている。

 17年には隣接地に2階建てのこども図書館も整備され、絵本や児童書も整えられた。コーヒーを飲みながらゆったり本を読める洗練された空間が整うのは魅力である。これでは、公設の書斎・カフェをつくったという話だが、それだけではない。武雄市図書館では、年間1500回を超えるイベントや講座を企画、運営している。

 英会話、篆刻(てんこく)、天体観測など、市民のためのさまざまなプログラムが無料、もしくは実費程度の費用負担で提供される。この講座を通じて地域の人々が顔見知りになり、新たな活動に展開するような事例も生まれていると聞き、住民参加のプラットフォームとしての可能性を感じた。

 もう一つが、伊万里市民図書館だ。1990年代に市民が利用できる図書館が欲しいという住民の声を受けて、同市では、市民参加型で図書館の整備をした。図書館に求める機能と役割、利用方法について議論を重ね、子どもからお年寄りまで、それぞれが利用するシーンを考えながら、丁寧に設計やデザインされた空間が整えられている。

 車椅子でも手が届く145センチの書架、さまざまな形や広さの机やテーブルと椅子があり、利用者はその日の自分の気分や目的にあったお気に入りの場所を選択できる。蔵書も一般書から専門書まで40万点以上あり、選ばれた良書がそろう。利用者が必要な本や資料を探してくれるレファレンスサービスは、かゆいところに手が届く。

 館内のあちこちに、司書が各種テーマで図書紹介コーナーを作るなど、市民が社会や地域のことを知る工夫や、話題のニュースを深く考えるための書籍や情報提供も丁寧に行われている。「図書館フレンズいまり」という市民活動組織もあり、イベントなどの運営にも関わる。絵本の読み聞かせの活動拠点にもなるなど、地域の中で出会いやつながりを生む結節点だ。

 地域の公共図書館は単に図書の収集と貸し出しを行う場所ではない。本を通じて人と人とが交流し、学び合い、語り合う情報・交流のプラットフォームとしての役割がある。二つの公立図書館は、それぞれの形で、地域の情報収集と発信、文化の醸成、そして交流拠点としての役割を模索している。いま、地域にはこんな居場所が求められている。

(東洋大学教授 沼尾 波子)

 

(KyodoWeekly12月16日号から転載) 

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