「口福の源~食料」冷凍パン市場が拡大

 日本では少子高齢化を背景に、慢性的な労働力不足と人件費の高騰が続いており、「団塊の世代」が75歳以上になる2025年以降も高齢者人口は増え続けている。

 一方、15歳以上65歳未満の生産年齢人口は1990年代をピークにその後も減り続けている。

 また、2018年の完全失業率は2・4%、有効求人倍率は1・61倍で、好景気を背景に飲食業や宿泊業では人手不足が深刻である。

 ベーカリーなどパン業界では、技術を持つ職人による製造が一般的であったが、その育成には時間とコストを要し、慢性的な人材不足の状況にあった。その解決策としてベーカリー、ホテル、レストラン、カフェなどのバックヤードで冷凍パン生地や冷凍パンの使用が増えていった。

 冷凍パン生地を簡単に分類すると、原料を混合した「生地玉」、生地玉をパンの形にした「成形冷凍」、成型冷凍を発酵させた「ホイロ後冷凍」、ホイロ後冷凍を焼成した「冷凍パン(焼成後冷凍)」がある。

 技術や機材を持つベーカリーは原価率の低い生地玉を使い、それを持たないホテルやカフェなどは再加熱だけで提供できる「冷凍パン」を使う傾向にある。

 このうち人手不足を背景に市場拡大するのが「冷凍パン」である。パンの販売チャンネルの拡大も追い風になっている。

 従来は量販店、コンビニエンスストア、ベーカリーがパンの三大販売チャンネルであった。

 ただ、焼き立てのおいしいパンをいつでもどこでも提供できるよう、ホテル、レストラン、カフェ、ファストフード、居酒屋、カラオケ、テーマパーク、シネマコンプレックス、高速道路のSA・PA、道の駅、ブライダル会場、給食施設などが焼き立てパンの取り扱いを積極化している。

 「冷凍パン」は、オーブントースターで焼き色をつける程度の加熱で提供でき、ホイロやオーブンなどの設置スペースを必要としないため、販売チャンネル、利用機会は広がっている。

 

高い市場成長性

 

 ブライダル会場では、本格的な食事パンを簡単なオペレーションで提供している。インバウンド需要に沸くミドルグレードのホテルでは、朝食向けのミニパンやクロワッサンが、シティーホテルでは本格的なハード系が、居酒屋やカラオケ店では、ガーリックトーストなどに使用する食パンが、有料老人ホームでは、朝食用のロールパンが新たな顧客サービスとして提供されている。

 人手不足から生まれた“苦肉の策”であった「冷凍パン」は、保管期間の長期化、製造方法の簡便化、食味の改善、新規販売チャンネルの開拓、使用メニューの開発、喫食シーンの開拓などを裏付けに、今後も需要が拡大し、高い市場成長性が期待される。

(矢野経済研究所 フードサイエンスユニット

理事研究員フェロー 加藤 肇)

 

(KyodoWeekly12月16日号から転載)

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