「落語の森」名人・名工・名優

 来年は、「ねずみ年」。そこで、そのものズバリ「ねずみ」という噺(はなし)。昔だと先々代(三代目)桂三木助師の売り物で、そのお弟子さんの入船亭扇橋師に伝わって学生時代によく聴いた。今は、そのお弟子さんの入船亭扇遊師が演(や)っている。この扇遊師、何とも様子のいい噺家さんだ。今秋、紫綬褒章を受章した。

 元は、浪曲ネタだったのを三木助師が広沢菊春師から譲ってもらった、というのが通説。名工・左甚五郎の仙台でのエピソードをつづったもので、サゲのねずみの「あれ虎ですか? 猫かと思った!」が可愛くて好き!

 甚五郎ネタには他に「三井の大黒」「竹の水仙」とある。「三井の大黒」は甚五郎が江戸に戻った際の噺、古今亭志ん生師が若い頃、甲州の寄席で演って下足番の老人にダメを出されたという逸話がある。詳細は、小島貞二氏がまとめた師の著書「びんぼう自慢」(ちくま文庫)でどうぞ。「竹の水仙」は三島での噺、先代(五代目)柳家小さん師が得意にして演っていた。

 名優の噺には「淀五郎」「中村仲蔵(なかむら・なかぞう)」があって、「淀五郎」は、沢村淀五郎の苦心談。三遊亭圓生師のが良かった! 今は五街道雲助・春風亭一朝・林家正雀ら芝居好きの師匠方が気持ち良く聴かせてくれる。「中村仲蔵」は、先代(八代目)林家正蔵師が自信満々に演っていた名優の出世談。師亡きあとは、圓生・先代(十代目)金原亭馬生・古今亭志ん朝・先代(五代目)圓楽師らが、今は春風亭小朝師が現代の息吹を吹き込んで聴かせてくれる。

 「名人長二」という指物師(さしものし)が主人公の長い噺がある。モーパッサンの小説を三遊亭圓朝師が翻案したとされている。とにかく長い、何段にも分けて演るが全部を聴いたことがない。雲助・隅田川馬石の師弟がそれぞれ重厚に聴かせてくれる。

 「宋泯(そうみん)の滝」は古今亭一門の志ん橋・駿菊師らがよく演る。腰元彫(こしもとぼ)りの名人・横谷宋泯の噺。「金明竹」の言い立てに出てくる、あの「横谷宋泯」その人。歌詠みの西行法師の噺には「西行」「鼓ヶ滝」があって、爆笑派の四代目柳亭痴楽・先代(三代目)三遊亭圓歌両師が地噺「西行」で客席を沸かせていた。「鼓ヶ滝」は三遊亭好楽師のご長男・王楽師でよく聴く。慢心した西行がやり込められる噺で元は釈ダネという。

 親子の名人絵師の噺は「抜け雀」。演り手が多く、筆者も志ん朝師で覚え、演らせてもらっている。相州・小田原の旅籠屋(はたごや)が舞台。しっかり者のカミさんとポーっとした亭主というスタンダードな落語の夫婦。演っていても笑ってしまうほどの亭主、カミさんに信用がなく、いとおしい。サゲをどう仕込んでおくか、が演じ手の腕か。うまく仕込んでおくとサゲを言ったあとに客の「あァ!」というため息のような声が聞ける。

 「山梨落語研究会旗揚げ10周年・紫紺亭圓夢落語人生50年・明治大学落語研究会創部60周年」の本年、皆さまには、たいへんお世話になりました。どうぞ良いお年を!

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly12月9日号から転載)

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