「言の葉の森」混ぜ?交ぜ?まぜご飯

 突然ですが、私、食べることが大好きです。暇さえあれば、食べ物のことを考えています。料理も大好きで、紙面の校閲をしていて一番楽しいのは料理のページ。そこでミスすると、いつも以上に落ち込んでしまいます。

 そんな私の食いしん坊ぶりを知ってか、ある日、上司からこんな質問が。「まぜご飯の『まぜ』は、なんで『交ぜ』ではなく『混ぜ』に統一しているんだろう?」

 毎日新聞用語集では、次のように説明されています。

 まざる・まじる・まぜる

 交=とけ合わないまじり方

 混=とけ合うまじり方

 用例として、「交」は「白髪交じり」「交ぜ織り」、「混」は「雑音が混ざる」「絵の具を混ぜる」などが挙げられ、それと一緒に「混ぜご飯」「煮物を箸で混ぜる」もあります。

 この説明に即して考えれば、「混ぜご飯」ではなく「交ぜご飯」の方がより良いような気がします。まぜご飯の具は、多少形が変わるにしろ、決してとけ合ってはいないのだから。「煮物を箸で混ぜる」だって「交ぜる」では? なぜ、毎日新聞では料理関係の「まぜる」に「混ぜる」を使うのか。今まで、なんの疑問も持っていなかった私は考え込んでしまいました。

 上司と議論する中で最初に思いついたのは、しょうゆなど調味料が形をなくして具材にとけこんでいるからではないかということ。

 ただ、具材同士はまざり合ってはいない。あまりうまい説明ではない。自ら手を加えて「まぜる」と、「混」なのではないか。でも「交ぜ織り」は「交」だし…。じゃあ「ため息まじり」はどっち?などなど、思いついては検討し合い、飛躍し、また悩む…を延々と繰り返し、最終的に出た結論は、まざるものが元の状態に戻らないときは「混」を使用する、というものでした。

 まざったものは調味料であれ具材であれ、本来の姿には戻れない。これなら、どの「混」も説明がつきます。

 しかし、私たちはこの表記を採用していますが、これが絶対ではありません。共同通信社の記者ハンドブックでは、「『まぜご飯』など書き分けが難しい場合は平仮名書き」。小学館の新選国語辞典(第9版)には、「交ぜご飯」で項目が立っています。必ず正解があるわけではない。それが日本語の難しさであり、面白さだといえるかもしれません。

 混ぜご飯のことをひたすら考えていたからか、おなかがぺこぺこ。

 さて、世の中の「まぜご飯」はどの表記が多いのだろう。そんなことを考えながら、おいしいご飯へ向かいます。

(毎日新聞社 校閲センター 薄 奈緒美)

 

(KyodoWeekly12月2日号から転載)

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