11月の映画

 ★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「キューブリックに愛された男」

「キューブリックに魅せられた男」

(1日公開)★★★★

映画製作の裏側にあるものとは…

 映画監督スタンリー・キューブリックの没後20年にちなんで、彼の関係者に取材した2本のドキュメンタリー映画がカップリング公開された。

 まずは、長年キューブリックの専属運転手兼世話係を務めたエミリオ・ダレッサンドロへのインタビューを中心に構成された「キューブリックに愛された男」から。

 映画の大道具の丁寧な運搬がきっかけで、専属運転手となったエミリオは、きちょうめんで細かい指示を出し、メモ魔で、電話魔で、甘えん坊のキューブリックに、献身的に尽くす羽目になる。そして芸術家の気まぐれに翻弄(ほんろう)され、家庭生活を犠牲にし、変人の世話にへきえきしながらも、キューブリックから絶大な信頼を得て、2人の間には奇妙な友情が育まれていく。

 そんなエミリオの目を通して、キューブリックの映画製作の舞台裏、素顔や日常生活など、完璧主義と徹底したこだわりで知られたこの映画監督の素顔が浮かび上がり、ドライな作風とは違い、意外にウエットな人間性がにじみ出てくるところが興味深く映った。

 一方、「キューブリックに魅せられた男」の主人公レオン・ヴィターリは、俳優の道を捨て、自ら志願してキューブリックの助手となった。

 以後、キューブリックの映画製作における、あらゆる雑務をこなしていく。本作は、そんなレオンの、まるでしもべのようなキューブリックへの奉仕ぶりを追っていくのだが、寝る間も惜しむその行動は明らかに異常に映る。そして、そんなレオンの姿を通して、映画作りの中毒性や、人たらしと暴君というキューブリックの二面性が表れてくるあたりが、この映画のユニークなところだ。

 この2本のドキュメンタリーを見ると、映画作りは、エミリオやレオンのような数多くの無名の人々が陰で支えていることを改めて思い知らされる。この2本を見た後に、キューブリックの映画が見たくなるのは、もちろん映画自体の出来が素晴らしいこともあるが、映画の奥にひそむ彼らの仕事ぶりをたたえたい気持ちが湧くからだろう。

 

「アースクエイクバード」(8日公開)★★★

Netflix製作の“東京ノワール”

 本作は、日本在住経験のあるイギリス人作家スザンナ・ジョーンズの同名ミステリー小説をNetflix(ネットフリックス)が映画化したもの。製作総指揮をリドリー・スコットが務め、日本の大学で学んだ経験を持つ「アリスのままで」のウォッシュ・ウエストモアランドが監督した。

 舞台は1989年の東京。日本に住む外国人女性リリー(ライリー・キーオ)が行方不明となり、友人のルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)に嫌疑が掛かる。この2人の間にはミステリアスな日本人カメラマン禎司(小林直己)の存在があった…というサスペンスミステリー。

 今回、ウェストモアランド監督にインタビューする機会を得た。監督は〝東京ノワール〟的な映画を目指したこと。スコット監督作で同じく日本での異邦人の姿を描いた「ブラック・レイン」とのつながり、黒澤明監督の「酔いどれ天使」からの引用、日本語のせりふを頑張ったヴィキャンデルについてなど、本作にまつわる興味深いエピソードを語った。

 

「ターミネーター:ニュー・フェイト」(8日公開)★★★

「ターミネーター2」から28年後の続編

 「ターミネーター2」から28年後に作られた正統な続編。ジェームズ・キャメロンが製作に復帰し、監督は「デッドプール」のティム・ミラーが務めた。

 前作で、人類滅亡の“審判の日”は回避されたはずだった。ところが新たな脅威が現れ、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)とT―800(アーノルド・シュワルツェネッガー)もその渦中に巻き込まれていく。今回は新たなキャラクターとして、人類存亡のキーマンとなるダニー(ナタリア・レイエス)、未来からやって来た強化型兵士のグレース(マッケンジー・デイビス)、そして最新型ターミネーターREV―9(ガブリエル・ルナ)が登場する。

 「~2」の変形自在のターミネーターT―1000の特撮にも驚かされたが、今回も激しいアクションの連続に度肝を抜かれる。60歳を過ぎたハミルトンが、アクションではシュワルツェネッガーを凌駕(りょうが)していたのには驚いたが、衰えたシュワルツェネッガーの姿を見るのは寂しいものがあった。

「ドクター・スリープ」(29日公開)★★★

「シャイニング」から40年後の続編

 スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の伝説のホラー映画「シャイニング」の40年後をマイク・フラナガン監督が描く。

 惨劇から生き残ったダニー(ユアン・マクレガー)は、父親から殺されかけたトラウマと、繰り返し見る悪夢を抱えながら、孤独な日々を送っていた。そんな彼の前に、特別な力(シャイニング)を持つ少女が現れる。謎の事件に巻き込まれた彼は、少女と共に惨劇の場となった“あのホテル”にたどり着く。

 前作が残した謎を解く、という意味では、「2001年宇宙の旅」から「2010年」や、「ブレードランナー」から「ブレードランナー2049」同様の、中途半端感が残るのは否めないが、決して不出来ではない。前作よりも、生と死のはざま、怨念、といったテーマは明確に表現されていた。特に、悪女役のレベッカ・ファーガソンが妖しい魅力で存在感を示す。ちなみに原作者のキングは、前作は気に入らなかったが、本作は絶賛しているという。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly11月25日号から転載)

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