「音楽の森」新たな〝レコード芸術〟

 今回取り上げるのは、トランペットとギターのデュオという珍しいディスク。夏にリリースされたCDだが、秋の夜長にもフィットしそうな内容ゆえに、ここでご紹介したい。

 トランペットの佐藤秀徳は、東京芸術大を卒業後、Theater Orchestra Tokyo(熊川哲也のKバレエ・カンパニーのオーケストラ)の首席奏者を務め、横浜シンフォニエッタにも所属するほか、大友良英スペシャルビッグバンドのメンバーでもあり、NHKの「あまちゃん」や「いだてん」の録音に参加するなど、幅広い活動を行っている。

 ギターの佐藤紀雄は、1971年ギター・コンクール(現東京国際ギターコンクール)で優勝して以来、内外で活躍を続けてきたベテラン奏者。97年には「アンサンブル・ノマド」を結成し、音楽監督を務めている。

 2人は、2016年に「Barchetta(バルケッタ)」というデュオを組んで活動。今回リリースした「Viaggio(旅)」は、今年1月録音のファースト・アルバムである。なお曲によってはパーカッションの相川瞳が加わっている。

 収録されているのは19の小品。近代スペインの作曲家ファリャの歌曲集「7つのスペイン民謡」の各曲が随所に置かれて軸を成し、その間にダウランドを中心としたルネサンス、バロックの作品や、「朧月夜(おぼろづきよ)」「上を向いて歩こう」といった日本の歌などが挟まれる構成となっている。

 この意外な楽器の組み合わせ、実際にCDを聴けば極上のコラボだ。トランペットの佐藤のまろやかで透明感のある音色となめらかなフレージングが、ギターの佐藤の太く肉感的な音や奏法と絶妙にマッチし、新発見に満ちた音楽体験をもたらしてくれる。

 2人は、多彩にして筋の通った各曲を、晴れやかかつしっとりと聴かせ、しみじみとした味をも醸し出す。柱となる「7つのスペイン民謡」は適度なパッションでセンス良く奏され、メロディアスな曲もベタつかない節回しでストレートに表現されていく。中でも日本の歌はすてきな聴きもの。その一つである武満徹の「翼」には特に魅せられるし、ダウランドの「涙のパバーヌ」なども実に味わい深い。

 トランペットの小品集といえば、華麗な音色や超絶技巧を披歴するケースが多いのだが、本作はまったく違う。ビブラートを控えめにしながら、じっくりと「歌」を聴かせる(実はこれが難しい)まれな姿勢が素晴らしいし、そこに絡むギターが色香を付与していくので、決して単調にはならない。

 両楽器は音量がかなり違うため、実演ではバランスをとるのが難しい可能性がある。しかしCDならば的確なバランスで音楽を楽しめる。本作は新たな一つの〝レコード芸術〟といえるかもしれない。

(音楽評論家 柴田 克彦)

 

(KyodoWeekly11月25日号から転載)

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