「風のたより~地域経済」佐世保の地の利

 長崎県佐世保市は、130年前に海軍鎮守府(ちんじゅふ)が置かれ急速に発展した。鎮守府設置の背景には二つの「地の利」があった。一つは沖縄を除き日本の最西端、中国・アジアに近いという地理的優位性。直線距離は東京まで約1千キロに対し、上海までは800キロだ。二つ目の地の利は、地形だ。かの東郷平八郎(旧日本海軍元帥)が測量を担当し、湾の入口が狭く、中は広くて水深が深い良港とのことで軍港として佐世保が選ばれた。

 佐世保は今もこの「地の利」の恩恵を受けている。米海軍と自衛隊の基地があるほか、大型クルーズ船寄航も増えている。

 ただ、地理上の位置については、「佐世保は西の果て」と逆に「弱み」と捉える声も聞かれる。成長に伴い本社を東京や福岡に移す企業もあり、長崎県には上場企業がない。若者も東京・福岡に憧れ、地元就職率は低い。それでも世界経済の重心が中国・アジアへ移るにつれ、佐世保の地理的な優位性は高まっていると思われる。

 一方、良港を生み出した起伏の多い地形についても、「平地がなく坂道ばかり」と嘆く声が聞かれる。しかし、日本屈指のアーケード商店街など、コンパクトでにぎやかな中心市街地が形成されたのは、この地形のおかげだ。また、中心部から坂道を15分も上ると、米海軍・自衛隊の艦船や客船が浮かぶ湾や造船所のクレーンなどが見えてくる。ひと山越えた西海国立公園九十九(くじゅうく)島の景色は有名だが、市街地側もそれに劣らない絶景だ。満員電車とビルのはざま暮らしに疲れた都会人の気持ちも一気にリフレッシュすること間違いない。

 造船業が華やかなりし頃までは、山腹までひしめくように建造物が建てられた。今も眺望のいい山腹の住宅は米国人に人気があり、米軍専用賃貸住宅が増えている。しかし、多くの佐世保市民には、中心市街地に相次いで建設されたマンションの方が好まれ、山裾・山腹には空き家が目立つようになってきた。これは、マンション建設によりコンパクトシティー化がさらに進捗(しんちょく)し、新たな人口を受け入れるキャパシティーができたということだ。小学校も多くは高台にある。眺望抜群で街の中心部から坂道を15分、小学校も近い一等地が今なら比較的安価に手に入る。

 世界経済の重心に近い佐世保で事業を軌道に乗せ、高台の窓の大きな家で家族とともに幸せに暮らす。そんな夢を描いて、子育て世代の有能なビジネスマンやクリエーターが佐世保に集結。そんなムーブメントが起こりつつある。先月も全国にクライアントを持つアドバイザーが東京からの移住を決意した。彼ら佐世保ヒルズ族の動向に注目だ!

(西海みずき信用組合理事長 陣内 純英)

 

(KyodoWeekly11月25日号から転載)

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