「口福の源~食料」「激辛」第4次ブーム到来

 「辛い味」にも、時代のトレンドがある。この2、3年でじわじわと浸透し、目下ブームの盛り上がりを見せているのが、中国・四川料理発祥の「麻辣(マーラー)」味だ。

 「麻」はサンショウの舌がしびれる辛みを、「辣」はトウガラシの舌がヒリヒリする辛みを表現する言葉。中国産のサンショウは日本産よりもかんきつ系特有の爽やかな香り、辛味がずっと強い。実が熟すと赤い花が咲いたように見えるため、「花椒(ホアジャオ)」と呼ばれる。日本の粉山椒(ざんしょう)も、なめると舌が軽くしびれるが、花椒はまさにビリビリとしびれる強烈な辛さだ。

 味覚で受容する甘味・苦味・酸味・塩味・うま味の五味とは違い、辛みは痛覚と温覚で受容する。トウガラシを食べると口の中が痛くて熱くなるのは、辛み成分カプサイシンの作用だ。サンショウの辛み成分サンショオールは、辛味度ではカプサイシンより低いが、麻酔薬のようなまひ作用を持つのが特徴。サンショオールは胃腸を刺激して機能を高める効果も高く、さまざまな漢方薬に処方されてきた。

 そんな強烈な刺激の麻辣味が、いま「シビ辛」の愛称で、ファンを増やしている。もっとも代表的な料理が、ご存じマーボー豆腐だ。以前はトウガラシだけで作るのが普通だったが、花椒の粉を使った本場四川風が主流になりつつある。コンビニ弁当のマーボー豆腐やマーボー丼でも、びっくりするほどシビ辛だ。

 ほかにも、スナック菓子、カップ麺、炒飯(チャーハン)や麺類、肉まんと、コンビニだけでも結構な数のシビ辛食品が見つかる。

 いつから、日本人はこんなに辛い食べ物が好きになったのだろうか? 

 実は、コショウの伝来は奈良時代と古い。トウガラシは16世紀に伝わり、早くも17世紀には七味唐辛子が誕生した。七味の中には、粉山椒が含まれている。江戸時代の日本人は、トウガラシとサンショウの相性のよさを、すでに知っていたわけだ。当時は、うどんにはコショウ、そばには七味唐辛子をかけるのが一般的だったという。

 しかし、和食で辛みは、あくまで料理をおいしく食べるための脇役。日本人の辛み嗜好(しこう)が本格的に高まるきっかけになったのは、1980年代の激辛食品ブームだった。

 火付け役は、84年発売のポテトスナック「カラムーチョ」(湖池屋)、インスタント麺「オロチョン」(サンヨー食品)、「辛口カレーパン」(木村屋總本店)とされる。激辛食品が世にあふれるようになり、86年の新語・流行語大賞の新語部門で「激辛」が銀賞に輝いた。

 以降、第2次、第3次ブームを経て、現在の麻辣味が第4次ブームにあたる。ブームのたびに日本人の辛みに対する耐性は上がったきた。今後、どこまで辛くなるのか、恐いようで楽しみでもある。

(食文化研究家 畑中 三応子)

 

(KyodoWeekly11月11日号から転載)

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