「言の葉の森」鳥肌が立つ

 盛り上がりをみせたラグビー・ワールドカップ(W杯)。こういった大会で日本の選手が活躍すると、「感動して、鳥肌が立った!」というファンのコメントを、新聞やテレビでよく見聞きします。

 この「鳥肌が立つ」という表現。毎日新聞の用語の決まりを載せた用語集では「恐ろしさや寒さのために皮膚がざらつく状態を指す。感動の表現に使うのは好ましくない」としています。コメントのような使い方は「好ましくない」ということになりますが、文化庁の国語に関する世論調査(2015年度)によると、40代以下では6割台後半から7割強の人が「すばらしさに鳥肌が立った」という使い方をするという回答結果でした。

 校閲の仕事をはじめるまでは、私も特に意識せずに使っていたような気もします。このように、ふだんよく耳にする言葉でも、本来の意味はなんだろう?と急に気になって、わからなくなることもあります。

 先のラグビー関連では、日本選手を紹介する記事中の「人一倍気合が入っていた」という文を読んでいて、「よく使う表現だけど、人一倍って、人の1倍だから、他の人と同じくらいの気合?」などと考えてしまいました。もちろんそうではなく、辞書を引くと「一倍」は「ある数量を二つ合わせた数量。二倍/(副詞的に)いっそう。ひとしお」(広辞苑)という意味もあると、しっかりと説明されていました。

 職場の先輩に指摘されて、「たしかに、この使い方はおかしいかも」と気づかされることも多々あります。

 あるスポーツ選手が「育児と両立して競技に励む」という表現。「『両立』は一般的には自動詞だから、この場合は『両立させて』がいいのでは」と、辞書を開いて「両立」の項をみせてくれました。

 また「序盤から圧巻」という見出しがついたときのこと。「この場合、試合のどこかの場面というより、はじめから最後まで相手を『圧倒』していたということではないのかな。圧巻は本来全体の中で最もすぐれた部分という意味だけど」と指摘されました。

 簡単な言葉でも辞書を引いてみると、いかに自分が「なんとなく」の理解で言葉を使っているかということに気づきます。ふだんの会話では、相手に伝われば気にしすぎる必要はないと思いますが、新聞では多くの方に正しく伝わる表現をしなければいけません。

 日常的に使っている言葉でも、「なんとなく」とせずに少し立ち止まり、この使い方は正しいか、本来はどういう意味なのか、辞書を引いて一つ一つ確認することを心がけたいです。

(毎日新聞社 校閲センター 日比野 進)

 

(KyodoWeekly11月11日号から転載)

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