“卒業”相次ぐ昭和の国鉄製車両 省エネ、運行コスト低減で

 旧日本国有鉄道(国鉄)が製造し、昭和の雰囲気を漂わせる旅客用車両が、JR各社から相次いで引退している。国鉄製車両は「老朽化しており、故障もよく起こることに頭を痛めている」(JR主要企業幹部)のを背景に、省エネルギーで運行コストも低減できる新型車両に置き換えているためだ。

 

風前のともしび

 

 1987年の分割民営化から32年が経過した。JR東日本は今年3月末時点で、国鉄製が在来線車両に占める割合が約9%に低下し、JR東海は国鉄製が8両だけと風前のともしびになっている。

 東日本と東海、西日本、九州のJR上場4社はいずれも2019年3月期連結売上高が過去最高となり、堅調な業績を追い風に車両新造を含めた設備投資が活発になっている。

 このため、4月1日時点で新幹線を含めた全車両数のうち約3割が国鉄製のJR西日本、26・6%のJR九州でも置き換える動きが加速しており、鉄道愛好家からは、趣がある国鉄製車両の引退を惜しむ声が広がる。

 JR東海に残る国鉄製は国鉄末期の1985年に生産が始まり、関西線などで走ってきたステンレス製の電車211系だけだ。関係者は「具体的な引退時期は決まっていない」と話すが、同社は国鉄世代が全て“卒業”する第1号になるのは確実な情勢だ。

 JR東日本は、東京駅と静岡県・伊豆半島の伊豆急下田、修善寺両駅を結ぶ特急「踊り子」で走る81年登場の電車185系を2021年までに全て置き換え、引退させる。これでJR東日本の特急列車から国鉄時代に造った車両が一掃される。

 185系は特急と普通列車の両方に使える“一人二役”の車両として設計され、スムーズに乗降できるように出入り口のデッキ部分を広くしたのが特色だ。

 JR主要企業幹部は「当時の国鉄は財政難に陥っていたため、開発も合理化して車両への投資を抑える狙いがあった」と明かす。

 ただ、当初は普通車の座席の背もたれが倒れなかったため、特急列車の利用客から「特急料金を支払っているのに居住性が悪い」といった不満の声が噴出。後にリクライニング座席へ変更された。

 踊り子に使っている編成の外観は白をベースに緑色の斜めのストライプが3本入った塗装で、JR東日本幹部は「見た目の良さで採用されたものの、手間がかかる塗装で作業員泣かせの面がある」と指摘する。

 後継には、中央線の主に新宿(東京)―松本(長野県)を走る特急「あずさ」や新宿―甲府などの「かいじ」で今年3月まで運用していたE257系を白と青を基調にした塗装に変え、転用する。

JR東日本が特急「踊り子」から引退させる185系=2017年4月、横浜市

 

 一方、JR東日本は、青森県と秋田県を結ぶ五能線といった主に東北地方の一部路線に残る1977年登場のディーゼルエンジンを搭載した気動車キハ40の置き換えも進めている。

 「オレンジ色の電車」として長年親しまれ、大阪市中心部を周回してきたJR西日本大阪環状線の車両が今年6月7日にラストランを迎えた。外観をオレンジの一色で塗装した201系は81年から量産され、省エネルギー電車の走りとしてサイリスタチョッパ制御と電力回生ブレーキを搭載した画期的な車両だった。

 大阪環状線からの退場へ背中を押したのは老朽化に加え、乗降客が多いプラットホームの安全を確保するためにホーム柵の設置を進めるという事情だった。

 201系は客室に1両当たり4カ所のドアを設けているのに対し、阪和線と直通運転する「紀州路快速」や「関空快速」などに使う他の列車のドア数は1両3カ所で、乗降する位置が異なる。JR西日本はホーム柵設置を進めるために3ドア車へ統一することを決め、201系の後継となる3ドア車で外観が銀色を基調としたステンレス製の新型車両323系の導入を2016年に開始。計176両の投入が完了したのに伴い、201系はお役御免となったのだ。

 JR西日本は先立つ今年3月16日のダイヤ改正で省エネの新型車両227系を大量に投入し、山陽線の三原(広島県)―岩国(山口県)などの広島地区の電車を統一した。急勾配区間で走れるように力強いモーターを備え、通勤通学の足として活躍してきた1963年登場の115系などが広島地区から消えた。

 和歌山と王寺(奈良県)を結ぶ和歌山線と、奈良県内の桜井線でも227系を今年3月から順次入れており、2020年春までに両線に残る国鉄製車両を引退させる。常磐線で使っていた車両などを改造し、扇風機があるなど「国電」と呼ばれた国鉄時代の通勤電車の雰囲気が残る105系が消える。

JR西日本の大阪環状線を走る201系=2017年9月、大阪市

 

蓄電池の電力

 

 福岡市と近郊を通るJR九州の香椎線(西戸崎―宇美)からは、国鉄時代に製造された気動車が今年3月に消えた。長年活躍してきたキハ40と、通勤通学のラッシュ時に乗降しやすいようにドア1カ所の扉を2枚にしたキハ47が3月16日、蓄電池の電力で走る車両「DENCHA(デンチャ)」に取り換えられた。

 JR九州の青柳俊彦社長は「これからは気動車の置き換えが主流になる。維持費の削減もできる」と訴えており、国鉄製車両がドミノ倒しのように消滅しそうだ。全国で同社だけに計28両が在籍する形式で、長崎県内の大村線で走っている1974~75年製のキハ66・67も数年以内に消える見通しだ。

 大出力のディーゼルエンジンを搭載し、乗り心地が優れた空気ばねの台車を採用している。キハ66・67はJR九州初代社長の石井幸孝氏が技術者として設計に携わった車両だが「古くなっているので、特別扱いで残すことはない」(幹部)という。

 かつて常磐線などで活躍し、交流と直流の両方の区間を走れる電車415系の鋼鉄でできた初期型車両もJR九州が“最後の牙城”となった。

 ある役員は「71年の製造開始から半世紀近くたったので、段階的に置き換えて全て引退させる」と打ち明ける。令和の時代を駆ける2世代前の昭和に誕生した国鉄製車両にとって、残された時間は少なくなってきた。

JR九州のキハ66・67。国鉄時代の塗装を再現した編成=3月、長崎市

 

[筆者略歴]

大塚 圭一郎(おおつか けいいちろう)

共同通信社福岡支社編集部次長。1973年東京都生まれ。東京外語大フランス語学科卒。97年に入社。編集局経済部で国土交通省記者クラブなどを担当し、ニューヨーク支局、経済部次長を経て2018年12月から現職。優れた鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」の審査委員を務める

 

 (KyodoWeekly10月21日号から転載)

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