「陸海空の現場~農林水産」農業ビジネス拡大の背景

 2009年に改正農地法が施行された。農業生産法人以外の一般法人についても賃借であれば、農地を適正に利用するなど一定の要件を満たす場合には、全国どこでも参入可能となるなど、新規参入の規制が大幅に緩和された。以降、一般企業の農業参入は着実に増加し、農地を利用して農業経営を行う一般企業だけでも17年末現在で3030法人に達している。

 農業ビジネスという言葉に明確な定義は見当たらない。「アグリビジネス」はどちらかといえば農産物と直接関連する分野で、生物学や工学など技術的なアプローチを指していた。単一の農作物を生産するモノカルチャーや遺伝子組み換え作物など、多国籍企業が進めるビジネスモデルを中心に語られてきた印象がある。

 しかし、農業ビジネスは生産事業だけでなく、農機、種苗、肥料、薬品などの資機材供給や、選別・貯蔵を含む流通、6次産業化などの加工、決済や与信も含めた電子商取引まで、幅広い産業にまたがる。さらに農業経営とリンクするコンサルティングや地域創生事業、人材育成など、農業に多面的価値を提供する分野もある広域ビジネスである。

 企業が農業ビジネスに着目する背景として、参入するに十分な幅と規模を有していることが挙げられる。農業総産出額自体は17年度で9兆3787億円。収益性も他産業に比べて高いわけではないが、最終的な食消費はその10倍以上に上り、農機や資材といった関連ビジネスを加えると、市場規模は100兆円を超える。

 企業から農業へのさまざまなアプローチが現れた背景には、情報技術(IT)やバイオテクノロジーの進歩のほか、農業にさまざまな価値が期待されたことがある。競争社会でのストレス、過労死などの問題、食品偽装や残留農薬など食の不信、国内食料自給率低下への危機感、環境破壊に対する問題意識が、日本人の心の中で顕在化してきた。企業側も人口減少を続ける国内の事業に危機感が募る中、事業領域を開拓したいという考えは根強い。農業自体にも高齢化、後継者不足、耕作放棄地増加などによる地域力の低下など喫緊の問題が山積している。社会、企業、地域が共通して抱える問題にアプローチする手段として、農業ビジネスに注目が集まっている。

 環境や社会問題に配慮したESG投資の世界的な残高は2200兆円に上り、15年の国連サミット全会一致で採択された持続可能な開発目標(SDGs)など、企業が長期的に優れたパフォーマンスを継続するにあたり社会的責任はますます重視される方向にある。今求められているものが農業が持つ多面的な機能とするなら、企業主導の農業ビジネスの活発化は必然といえる。

(矢野経済研究所 フードサイエンスユニット 理事研究員 清水 豊)

 

(KyodoWeekly10月7日号から転載)

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