「口福の源~食料」「バスクチーズケーキ」大ブーム

 「バスクチーズケーキ」という名前を聞いたことがあるだろうか? 目下ブーム中の洋菓子だ。

 バスクは、ピレネー山脈をあいだに挟み、フランスとスペインにまたがる地方で、独自の言語と文化を持つ。日本で有名なバスク人では、最初にキリスト教を伝えたザビエルがいる。近年は、ミシュランの星つきレストランが集まる美食エリアとして、世界的に知られる。

 このチーズケーキ、実はバスクの伝統菓子ではない。スペイン側の観光都市、サンセバスチャンにある老舗バルの名物メニューが、SNSを通して全世界に拡散し、欧米、東南アジア、トルコ、日本…と目下、各国で同時多発的にブームが起こっている。まさにインターネット時代を象徴する流行現象だ。

 英語で“焦げたチーズケーキ(burnt cheesecake)”と呼ばれるように、表面が濃い茶色から、真っ黒に焦げたものもある。通常より高温で焼くためで、焦げのほろ苦さが甘味を抑え、よいあんばいになる。

 クリームチーズの含有量が非常に多く、材料はほかに卵、砂糖、生クリーム、ごく少量の小麦粉をただ混ぜ合わせて型に流し、オーブンで焼くだけと超シンプルだ。

 ポイントは、上をしっかり焦がし、真ん中はレアの状態に仕上げる焼き加減だ。皮はカリッ、内側はふわっとしているが軽すぎず、中心にいくほどやわらかな食感になる。濃厚だが、チーズのほのかな塩気がさっぱりとさせ、ワインにも合う。

 日本では昨年夏、東京・白金に専門店ができ、開店初日から長蛇の列だった。以来、食べられる店が続々と増え、コンビニスイーツにもなった。ローソンが今年の3月「バスチー」の名称で発売し、4カ月間で1900万個も売り上げた。記録的な大ヒットである。

 これほど短期間で人気をかちえた背景には、日本人のチーズケーキに対する強い嗜好(しこう)がある。戦後ずっと乳製品の王座にあったのはバターだったが、1966年に生産量、家庭内消費量の両方でチーズが抜き、70年代には長期にわたってチーズケーキブームが続いた。買って食べる以上に、家での手作りが流行した。

 チーズケーキの人気は衰えることを知らず、それ以降もチーズを使った菓子は、ことごとく注目を集めている。90年に前代未聞のブームを巻き起こしたティラミスも、その系譜に連なる一つだった。

 インターネットでは、自分の興味がある情報にしかアクセスしないため、知っている人は知っているが、知らない人はまったく知らないというように、ブームが局所的になりがちだ。右向け右の流行は起こりづらくなったが、チーズケーキはアクセス数が安定して高く、もっともブームに近いスイーツなのである。

(食文化研究家 畑中 三応子)

 

(KyodoWeekly10月7日号から転載)

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