「風のたより~地域経済」北のコメ作りで進む生産性向上

 8月下旬、早くも秋の気配を感じる北海道旭川に降り立った。車が旭川空港を出るとすぐに、既に黄金色に輝き、自らの重みに耐えかね、こうべを垂れた稲穂が果てしなく続く、広大な水田地帯に入った。

 聞けば、今年は例年より稲の育ちが良く、9月の初旬から稲刈りが始まるという。稲刈りのシーズンは、地域、品種によってまちまちであるが、本州では10月に入ってからという地域もある。夏の短い北海道では、早い時期に稲刈りをせざるを得ないわけだが、新米を他地域に先んじて市場に出せるというメリットもある。

 元来、北海道は水田面積全国1位を誇るコメどころだ。しかし、寒さゆえ、コメ作りには不向きとの見方もあり、実際、北海道の稲作は、冷害との闘いの歴史でもあった。最近、「ななつぼし」や「ゆめぴりか」といったブランド米を生産できるようになり、コメの一大産地としてのイメージが定着してきた。今でも、通常炊いて食べるうるち米産地としては、旭川近郊が北限とされており、さらに北上すると、もち米生産が主流になる。

 いま、こうした北海道の稲作が、大きく変わろうとしている。北海道の1枚の水田の面積は、本州に比べればすでに十分大きいが、さらなる生産性向上を目指し、大規模化を図る圃(ほ)場整備事業が進められている。

 旭川市に隣接する鷹栖町では、平坦地における標準的な規模を約2・2ヘクタール(260メートル×85メートル)に設定し、順次水田の圃場整備が行われている。

 これほどまでに1枚の水田の面積が大きくなってくると、トラクターなどの農業用機械を人が運転していては、まっすぐ走らせることすら難しい。蛇行運転になれば、場所によって肥料の過不足が生じ、収穫物の品質に悪影響が出てくる。必然的にGPS(衛星利用測位システム)により制御された、自動運転が可能な農業用機械の導入が必要となる。

 少し前まで、水田を自動運転の大型トラクターが走り回ることなどは、夢のような話であったが、既にそれを前提とした農地へと作り変えられようとしている。背景には、海外産のコメとの競争に向け、生産性向上を図る必要に迫られていることとともに、担い手の減少がある。

 前出の鷹栖町は、農業が主要産業でありながら、平成17(2005)年には459戸あった販売農家が、平成27(2015)年までの10年間で38%減少し、283戸になってしまった。北海道の農家数は、最も多かった昭和30(1955)年代に比べると、2割に満たない数にまで減っている。その結果、農地集約が進み、食える農家が育っているわけである。

 もちろん、中には農地の大規模化や生産主体の法人化についていくことができず、やむなく離農した農家もあっただろう。しかし、離農した農家の働き手は、その時々の成長産業へと流れて行き、わが国の経済成長を支えたに違いない。

 今後、確実に生産年齢人口が減少するわが国にあって、農業に限らずあらゆる産業で、人手をなるべくかけずに売り上げを増やす生産性向上は避けて通ることができない。最北に位置するコメ作りの現場で、わが国産業の将来の姿をみた。

(日本総合研究所 調査部

上席主任研究員 藤波 匠)

 

(KyodoWeekly9月30日号から転載)

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