「口福の源~食料」食感の言語表現を楽しむ

 「サクッとバターサンド」「とろ~りとしたわらび餅ふわあわ抹茶」「ぷるるんとしたプリンシュー」「もちとろメロン杏仁」「もっちりとした毎朝の食パン」「しっとりメロンパン」「ふんわりお好み焼き」「シャキッと!コーンサラダ」「とろ~りチーズのもちっとピザまん」

 以上は、最近コンビニで見つけた、名前に「食感オノマトペ」入りの菓子・パン・総菜である。これに「とろけるプリン」のように、オノマトペではない食感用語が入った商品も含めれば倍増する。いま日本人は、食感にこだわった食べ物が大好きだ。

 きっかけは、1990年に爆発的ブームを起こしたティラミス。それまでの洋菓子にはないフワフワ、とろとろの食感がヒットの要因だった。以来、個性的な食感の菓子が増え、「新食感を作れ」が食品業界のキーワードになった。心地よい食感、おもしろい食感の演出は菓子以外の食品にも広がり、積極的にオノマトペで表現されている。

 オノマトペとは、擬態語と擬音語の総称。微妙なイメージやニュアンスを喚起するために使われる感覚的な表現用語で、日本語はオノマトペが豊富な言語として知られている。

 日本語は、食感を表現する言葉の数が非常に多い言語でもある。食品総合研究所の調査では、445語もあることがわかった。英語で77語、ドイツ語で105語、中国語で144語、フランス語で224語という研究例と比較して、驚くべき多さだ。日本人は、食感の微妙な差異を言い分ける能力に長けているらしい。

 日本列島には新鮮な魚介と野菜が採れる地域が多く、長時間の加熱はせず、生か生に近い状態で食べることが多かったため、食材そのものの食感を楽しむ嗜好(しこう)が発達したといわれる。

 特筆すべきは、445語の約7割が、オノマトペだったことだ。また、ねっとり、にちゃにちゃなど「に」と「ね」で始まる粘りを表現するオノマトペと、ぶりぶり、ぷるぷるなど「ぶ」と「ぷ」で始まる弾力を表現するオノマトペが多く見られる。その背景には、納豆、とろろ、こんにゃくなど、粘りと弾力のある食べ物に対する伝統的な嗜好がある。

 現在もっとも好まれている食感は、もちもち系、ふわふわ系、とろとろ系、しっとり系。もちふわ、ふわとろ、とろもちといったように、2種類の異なる食感オノマトペを組み合わせた食べ物も多い。

 もちもち系以外は柔らかさの表現だ。柳田国男は「明治以降の日本の食物は柔らかいものが好まれるようになった」と昭和初期に書いたが、その傾向はここにきて極端になっているように思える。納豆ですら、ふわっとした食感が喜ばれる時代だ。

 私たちは多種多様な食感を、こうして言葉で表現して楽しんできた。堅い食べ物が減りつつあることには寂しさを感じるが、今後も思いがけない新食感が「発見」されることだろう。

(食文化研究家 畑中 三応子)

 

(KyodoWeekly9月9日号から転載)

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