「風のたより~地域経済」人口減、過度に悲観せず

 出生数の減少に歯止めがかからない。2019年は、2018年に比べ大幅な出生数の減少が見込まれる。

 ここ数年、日本人の出生数は、前年比2~3%減で推移してきており、2018年は、厚生労働省が「人口動態統計」として集計し始めた1900年以降で、最も少ない約92万人であった。

 ところが、今年5月までの各月の出生数を、昨年同月と比較すると、毎月平均で6%以上少ない水準で推移している。もし、6月以降に「令和ベイビー」などの盛り上がりが生じなければ、今年は、史上最低であった昨年に比べ、5万人以上少ない87万人程度になることが予想される。

 これは、人口規模が大きい団塊ジュニア世代の女性の年齢が、出産適齢期を過ぎてしまったことと無縁ではない。

 団塊ジュニアは、1970年代前半に生まれた世代を指すが、彼らのうち最も若い人でも45歳に差し掛かった。45歳を超えても出産する女性はいるが、その割合は極めて少なく、女性1千人当たりの出生数は年間0・3人にすぎない。

 今後、出産適齢期の女性の数そのものが減少し続けるため、出生数を増加に転じさせることは極めて難しくなる。

 本格的な少子化に直面した日本社会にとって、たとえ出生数の増加は容易でなくとも、若い世代の所得環境や、子育て環境を改善することで、出生率の押し上げを図ることは喫緊の課題である。

 また、多様な出自を持つ人にとって暮らしやすい生活環境を提供することで、日本で働く外国人を増やし、労働力不足に対処することも不可欠であろう。

 それにも増して重要なことは、企業の生産性やサービス提供の効率性を高めることなどによって、たとえ人口が減少しても、経済成長しながら、より利便性の高い社会を築いていくことである。一定の経済成長がなければ、若い世代の所得環境を改善することも、外国人に選ばれる国になることも難しい。

 そのために求められることの第一は、積極的な技術革新の導入である。日本は、IT分野の技術革新の成果を社会に実装していく点で、隣国の中国に完全に後れを取ってしまった。わが国の重層的に張り巡らされた規制や、高齢社会ゆえの新しいものに対する感度の低さ、変化に対する抵抗感などが影響しているものと考えられる。

 求められることの第二は、企業による海外マーケットの取り込み、および海外への投資である。

 このところ、米国をはじめ、自国第一主義、保護主義を隠さない国もあるが、わが国の場合、縮みゆく国内マーケットを相手に、人手不足の国内だけで生産する、いわば「非国際化」企業の成長力には限界がある。

 ある研究によれば、中小企業においても、非国際化企業よりも、輸出や海外投資に積極的な企業の方が、生産性が高く、より多くの富を生み出すことがわかっている。

 たとえ2019年の出生数がショッキングな結果になったとしても、それを過度に悲観すべきではない。社会全体の生産性を高める方向にかじを切り、積極的に社会を変えていく契機であると考えればいいのである。

(日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 藤波 匠)

 

(KyodoWeekly8月12日・19日号から転載)


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