「口福の源~食料」「瞳を閉じて」食べるアジ

 長崎県五島列島のほぼ中央に位置し、長崎港まで約100キロの距離にある五島市の奈留島(なるしま)。島全体に山岳が連なり、特に岬の突出が多く、美しい海岸線が複雑に入り組み、天然の良港が形成されている島である。

 この島にある長崎県立奈留高校には、女子生徒がラジオ番組に投稿した便りに応えて、歌手の松任谷由実さんが贈った「瞳を閉じて」の歌碑が建っており、毎年卒業生はこの歌に送られて巣立っていくという。

 この島で養殖業を営む城山水産は近年アジの養殖を手掛け、内外に知られている。

 もともとは代々、タイとシマアジの養殖を行っていたが、魚価の低迷と原材料費の高騰などにより魚種の転換を余儀なくされアジの養殖にたどり着いたという。

 一般的なアジの養殖では1年程度で出荷するものの、城山水産では2年もののアジを出荷、そのため肉厚で脂ののりが抜群となっている。また、いけすの中で泳いでいる様子を眺めてみると、アジというより小ぶりのフグといいたくなってしまう。

 ところで、このアジは二つのルートで世の中に出回っている。

 一つは、長崎県佐世保港から米国西海岸まで鮮魚で運ばれているもので、ブランド名が「花美鯵(はなみあじ)」という商品である。1キログラム当たりの卸値が1300円ということなので、1キログラム4尾として1尾325円、当然小売値はもう少し値が張ることになるが、他国のことゆえ調理法を含めて知る由もない。

 もう一つが、2年以上の養殖期間を経たアジを丁寧に手作業で加工したマアジの一夜干し、商品名「まんまるあじ」である。この「まんまるあじ」、かつて某テレビ局の情報番組で紹介されていたが、その時のレポーターの表現は「かめばかむほど甘い」というものであった。筆者も試食させてもらったが、脂ののったサバではないかと感じた。

 さて、五島列島といえば、2018年に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連資産」の構成資産が点在するが、ここ奈留島にもその一つが存在している。「奈留島の江上(えがみ)集落(江上天主堂とその周辺)」である。1797年、五島藩の要請を受けて本土からの農民移住が始まると、江上地区にも潜伏キリシタンの4家族が住みついた。この4家族は1881年に全員がカトリックに復帰し、1906年ごろには簡素な教会を建てたと言われている。

 実はこのごろから、江上集落近辺の海ではキビナゴが豊漁となり、これが次第に信者を増やすきっかけになったという。現在の江上天主堂は、キビナゴ漁でためた建設資金で1918年に建設されたという記録が残る。キリスト教文化とキビナゴ漁の深い関係を築いた奈留島の海、そこで育まれた「まんまるあじ」が奈留島の地域活性化に貢献していくことを期待したい。

(日本離島センター 専務理事 小島 愛之助)

 

(KyodoWeekly8月12日・19日号から転載)


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