「本の森」結婚不要社会

山田 昌弘著

● 200ページ

●朝日新聞出版(税別750円)

 

現実に横たわるハードル

 

 「婚活」も恋愛もこりごりだと、失恋するたびに思う。それでも結婚することを諦める決心がつかないのは、自分の人生に必要な気がするからだ。

 日本における結婚の現状を明らかにした興味深い本が出版された。少子化が進む日本が向かうべき社会を「結婚不要社会」とし、その道筋を予見する。

 著者は社会学を専門とする山田昌弘氏で、20年以上前から、日本の結婚難について考察している。

 私たちの身近なところでは、婚活や「パラサイト・シングル(学卒後も両親宅に同居して独身生活を続ける若者)」といった言葉を世に出し、浸透させた人物でもある。

 本書は、近代の結婚について「性関係のペアリングに基づく恒常的関係」と定義し、その特徴を説明するところから始まる。

 現在の夫婦は原則として、同じ空間に住み、財布を共有し、仲良く生活する。経済的にも心理的にも満たされることが、結婚に期待する効果だ。

 この特徴は普遍的なものではなく、産業革命以降に職業や住む場所を個人が選べるようになってからのトレンドであると筆者は分析する。

 しかし、現在の日本において、「経済的」と「心理的」を両立することは難しい。好きになった人がお金を持っているとは限らないからだ。非正規労働に就く若者が増え、賃金がなかなか上がらない。結婚に「愛情」と「お金」を同時に求めるというのが、現実に横たわる高いハードルとなってしまっている。

 日本はこのハードルを避けるようにして「結婚不要社会」になりつつある、というのが著者の主張だ。独身者は親と同居することに負い目を感じずパラサイト・シングルとなって経済的に充足する道を選んでいる。若者らは友人やペット、キャバクラや、性風俗などによって心理的にも満たされているのだという。

 本書の面白い点は、結婚という極めて個人的な活動を、時代・地域を超えて比較することで、客観的に観察したところだ。それは、20年以上にわたって結婚について語ってきた、著者だからこそできた仕事だろう。

 ただ、日本の若者の一部が結婚せずとも満たされている、という主張については、さらなる説明が必要だと感じる。「結婚不要社会」を主張するならば、その真偽はなおさら検討するべきだろう。

 結局のところ私は、本書に出合ったことで、結婚したいという気持ちが強くなった。「愛情」と「お金」の二兎(にと)を追うことを諦めたくないからだ。

(エッセイスト 鈴木 彩乃)

 

(KyodoWeekly8月12日・19日号から転載)


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