7月の映画

 ☆は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「ゴールデン・リバー」(7月5日公開)☆☆☆

ほら話や寓話(ぐうわ)を聞いているような気分に

 舞台は、1851年のゴールドラッシュに沸く米西部。シスター姓の殺し屋兄弟イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)は、ボスの命令で、川中の金を発見するための薬品の化学式を知るウォーム(リズ・アーメド)と連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)の行方を追う。

 5カ国合作の本作の監督はフランス人のジャック・オーディアール。このところの、異邦人が撮った何本かの西部劇には、正直なところストーリーにも風景にも違和感を覚えさせられたのだが、本作はひと味違った。

 まず、兄弟がオレゴンからサンフランシスコに向かう道中を描くロードムービー的な要素が強いことが最大の理由。また、ストーリー的には、民間伝承の西部のほら話=トール・テールや寓話のような雰囲気がある。オーディアール監督は、映画化に当たって、原作を大幅に改変したが、こうした雰囲気は残した。そこが本作を西部劇たらしめていると感じた。

 

「さらば愛しきアウトロー」(12日公開)☆☆☆☆

ロバート・レッドフォードの俳優引退作

 度重なる銀行強盗と16回の脱獄を繰り返しながら、誰もあやめなかった74歳の紳士的なアウトロー、フォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)の“ほぼ真実の物語”。レッドフォードの俳優引退作である。

 実話を基に、老人の犯罪をユーモアを交えて描いた点、あるいは、主人公に同情しながらも彼を追う若い刑事や、主人公に絡む老年女性の存在、ジャズ風の音楽など、この映画はクリント・イーストウッドの「運び屋」とイメージが重なるところが多々ある。

 とはいえ、「運び屋」にはイーストウッド独特の暗さがあったが、こちらは人生を楽しむ男のほら話的なものとして、明るさを感じさせる。ここが2人のスターの個性の違いで、イーストウッドは硬派で頑固な男、レッドフォードはスマートで軟派な男のイメージを貫いた感がある。また本作は、その端々にレッドフォードの過去の出演作がオーバーラップしてくるところもある。何とも“幸せな引退作”だ。

 

「トイ・ストーリー4」(12日公開)☆☆☆☆

ウッディの選択と自立を描くシリーズ最終章

 「トイ・ストーリー」の公開から約四半世紀、前作「3」から9年後。持ち主のアンディと別れたおもちゃのウッディたちは、新たな持ち主となったボニーと暮らしていた。自分をゴミだと思い込み、逃げ出したボニーの手作りおもちゃのフォーキーの後を追って、冒険の旅に出たウッディは、かつての仲間のボー・ピープや、子どもから一度も愛されたことのないギャビー・ギャビー、バイクスタントマンのデューク・カブーンたちと出会う。

 「3」で一度きれいに完結したので、今回はそこからの“終わりの始まり”のような物語になった。ウッディたちを、一度も行ったことがない場所(アンティークショップ、移動遊園地)に入れ込むことで、新たなキャラクター、騒動、アクションを生み出した。

 「3」の“後日談”という印象は拭い切れないが、ウッディの選択と自立を描いた本作がシリーズ最終章となるのは感慨深いものがある。ウッディの声を演じ続けたトム・ハンクスに拍手を送りたい。

 

「天気の子」(19日公開)☆☆☆

今度の舞台は雨が降り続く東京

 天候の調和が狂い、雨が降り続く東京。離島から家出し、東京にやってきた高校生の帆高は、雨をやませる能力を持つ少女・陽菜と出会う。「君の名は。」を大ヒットさせた新海誠監督の新作アニメーション映画。精緻な風景描写の中、少年と少女の恋を描くという骨子は前作と同じだが、背景は彗星(すいせい)の衝突から天候不順に、ヒロインはみこから“晴れ女”に、舞台は四ツ谷から新宿、代々木へと変化している。最も違うのは、「君の名は。」の主人公たちが超常現象に対して受け身だったのに比して、本作の帆高と陽菜は、自らの意志で“選択”をするところだ。

 新海監督自身が「彼らの走り抜いた先のエピローグを、観客がどう受け止めてくれるかは分からない。賛否さまざまな意見をいただくかもしれない」と述べているように、観客の反応に興味が湧く。また、同時期に公開された「トイ・ストーリー4」が、やはり主人公の“選択”をテーマにしていることも興味深い。

 

「マーウェン」(19日公開)☆☆☆

現実と空想世界が交差する二重構造

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害に遭い、障害を負いながらも、独自の世界観で写したフィギュアの写真で認められたマーク・ホーガンキャンプ(スティーブ・カレル)が、創作活動を通して回復していく姿を描く。タイトルはマークがミニチュアで作った第2次世界大戦中の架空の村から取られた。

 マークを描いたドキュメンタリー映画に想を得た監督のロバート・ゼメキスは、現実の中にマークの空想世界を映像化して入れ込み、両者を交差させ、二重構造とすることで、マークの内面(恨み、暴力性、フェチシズム)を浮かび上がらせた。

 障害故に無垢(むく)なところがあるマークの人物像は、同じくゼメキスの「フォレスト・ガンプ/一期一会」の主人公と重なる部分もあるが、本作は、現実と空想世界とのバランス感覚が独特でグロテスクな描写も目立つ。

 そこが「フォレスト・ガンプ~」とは大きく違う。モーションキャプチャーを使って映像化したマークの空想世界がユニークだ。

(映画ライター 田中 雄二)

 

(KyodoWeekly7月22日号から転載)

PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ