「落語の森」夏が来れば…

 まずは、「夢の酒」。夢の中の若旦那の振る舞いからケンカになる若夫婦、それを収めるためさっきの夢の中に大旦那が・・・という発想がすこぶる落語的である。なのに名人先代(八代目)桂文楽師が演じると、現実味を帯びるから芸の力はスゴイ。粋な、あまりにも粋な噺(はなし)。

 「はてなの茶碗」は、人間国宝・上方の桂米朝師。ドラマチックなこの噺を復活させ、見事に演じる師にほれ込んだ立川談志師が評論家・矢野誠一氏に「米朝さんは、いいぞォ」とかつて興奮気味に語ったと伝えられている。

 東京では「茶金」のタイトルで古今亭志ん生師が笑いたくさんに演(や)っていた。来秋、せがれの金時師に五代目を継がせ、自身は金翁を名乗る三遊亭金馬師が「茶金」で演る。

 「人形買い」は、先々代(三代目)桂三木助師から、お弟子さんの入船亭扇橋師一門他に伝わっている。いなせな三木助師らしく派手さはないが何ともフワっとした江戸前の噺だ。

 「不動坊火焔(ふどうぼうかえん)」または「不動坊」、東の人間国宝・先代(五代目)柳家小さん師が良かった。これを飄々(ひょうひょう)と演ったのが先々代(九代目)桂文治師、独特なフワフワした高座だった。今は、三遊亭小遊三師、柳家権太楼師がにぎやかに聴かせてくれる。

 夏らしい涼しげな描写が楽しめる「青菜」、小さん師系の噺家さんがよく演っている。

 「麻のれん」は、盲人が主人公。麻ののれんと蚊帳(かや)を間違えてまくってしまい・・・、という他愛ない、見せる噺。先代(五代目)春風亭柳朝師から一番弟子・一朝師に、また扇橋師から扇辰師に伝わっている。このほか「心眼」「景清」と名作もあるが、「按摩(あんま)の炬燵(こたつ)」というあまり笑えない噺もある。

 「鰻の幇間(たいこ)」は、文楽師・志ん生師の巨頭や先々代(三代目)春風亭柳好師が演っていた。文楽師は芸人の悲哀を描き、志ん生師は客を取り巻く幇間(たいこもち)をにぎやかに演じ、柳好師は歌い上げた。古今亭志ん朝師や、意外にも橘家円蔵師も良かった。

 志ん生・馬生・志ん朝師親子がしっとりと演ったのが「水屋の富」。地味で盛り上げに欠ける、いわゆる「損な噺」だが、柳家さん喬師が聴かせる。

 「ぞろぞろ」で浮かぶのは、先代(八代目)林家正蔵師と立川談志師。引っ張っても引っ張っても天井から草鞋(わらじ)がぞろぞろ・・・、から付いたタイトル。馬生師の孫弟子・蜃気楼龍玉(しんきろうりゅうぎょく)師というとんでもない高座名の人が演る。師匠は五街道雲助師、兄弟子には桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)師、隅田川馬石(すみだがわばせき)師。お気づきのように師弟四人の亭号がバラバラという皮肉な一門。が、それぞれしっかりと落語の王道を歩んでいるように思える「古今亭」の曲者(くせもの)たちだ。

 「悋気(りんき)の火の玉」だと文楽・三遊亭圓楽両師の共に先代。桂文朝師のも楽しかった。

紫紺亭 圓夢(しこんてい えんむ)

 

(KyodoWeekly7月15日号から転載)

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